第341話 信じられる者

エレボスは、レイヴァー以外の戦力の乱入に戸惑っていた。


「こいつら、どうやってスパルタに侵入しやがった!結界は、そう簡単に通れるわけが……まさか。」

「貴様らが何をしたか忘れたわけではないだろう?我らがここに辿り着く前に、1度目の魔力吸収を行った。そのせいで、動植物は絶えてしまったが、結界も同時に破壊されていたのだよ。だから、我らはここまで入り込めた。」

「そこまで考えていなかったなんて、あなた方は愚かですね。」


ゼオン王とジュールの言葉に、エレボスは怒りを露にする。


「次期この世界を統べる魔族を馬鹿にするとは、ここで死にたいようだな!」

「お前の相手は、俺たちだ! 雨の音アメノオト三式サンシキ霧雨キリサメ!」


グルンッ!

ガギーンッ!

クロウの折りたたみ式剣の回転斬りが、エレボスを弾き飛ばす。


「くそっ、いつまでも邪魔してくる反乱因子どもが!いけ!ゴーレム!」

「ぐおぉぉ!」


2体のゴーレムがレイヴァーに迫る。


「ゴーレム、サリア達が倒さなくちゃーー。」

「ゴーレムは、僕たちに任せて!」


ガギーンッ!

ジュールとゼオン王がゴーレムと対峙する。


そこに、ダイカンの指揮する戦士たちも参戦する。


「ゴーレム、作られた存在とはいえレイヴァーの邪魔はさせん!」

「クロウ君たちは、あの魔族を!」

「頼りになるな、俺たちの仲間は!エレボス、そういうことだ。」

「私たちと、戦ってもらうわよ!」


スチャッ!

レイヴァーは武器を構える。


「くそっ、作戦がぐちゃぐちゃだ、なぜお前たちは反発をする!この世界が、新しく生まれ変わろうとしているのだ!それが、お前たちにはわからないのか!」

「ハデスとハーデンがやろうとしていることが、国のみんなが望んでいることなのかって聞いたのか?」

「その必要はない!ハデス様の作る世界に間違いはない、あの方は失敗をしない完璧な方なのだから!」

「完璧な人間なんてこの世界に存在しないわ!完璧であろうとしているだけで、必ず人には足りない部分がある。それを補うために、家族が、仲間がいるの!」

「お前も魔族の1人だろ!そんな弱きことを言っているようでは、次期魔王なんて夢のまた夢だな!あははははっ!」


高らかに笑うエレボスの声が響く。



「ふっ。」


その姿を見たクロウは、吐き捨てるように笑う。


「なんだ、何ががおかしい!」

「悪い、お前が哀れに見えちまってな、何でそんなに視野が狭いんだお前たちは。」

「視野が狭い?違うな、お前たちよりもさらに先の未来を見ているだけだ!」

「その先の未来を見すぎて、君たちは今見なくてはいけないものを見落としている!僕たちは、今を生きているんだ、今を変えれないで未来を作れると思うのかい?」

「生意気だな、やはりお前たちと話をするとイラつきが増すばかりだ!」


シュンッ!

エレボスの両手に闇の魔球が生まれ、放たれる。


「斬り落とせ!烈風の翼ゲイルウィング!」


ジャギンッ!

放たれた魔球を、大きな風の刃で斬り落とす。


続けて、


「壊せ!根の侵攻ルーツバスター!」


バゴーンッ!

エレボスの足元から、根が突き出す。


魔力を感知して空高く飛んで避けると、


「次は私だな! 始の光イチノヒカリ金剛の一撃アルデバラン!」


バゴーンッ!

ミラの大斧で叩きつけられる。


エレボスは防戦一方であった。


「ちっ、調子に乗るなよ新世界の誕生を祝えない、下等種族が!!」

「その下等種族に敵わないお前は、それ以下の存在ってことだな! 拳の響ケンノヒビキ五式ゴシキ雷撃ライゲキ!」


ゴスンッ!

両手の掌底突きが、エレボスを後ずらせる。


「はぁ、はぁ、こんなところで、終わってやるものか!」


ダダダダダッ!

エレボスは城の中へと逃げ去る。


「ちっ、逃げ足は早いな。」

「狼の!お前達にそいつらは任せるぞ!」

「ゼオン。」

「俺たちは、お前らに礼がまだ出来てなかったから、ここから先にこいつらは絶対に進ません!世界を、救ってくれ!」


ガギーンッ!ガゴーンッ!

増援に来てくれた仲間達が、ゴーレム達を抑え込む。


「……死ぬなよ。」


スタタタタッ。

レイヴァーは中へと入っていく。


「ふっ、そこの人族!あとどれくらいやっていけそうだ!」

「俺に言ってるのか?そうだな、娘が帰ってくるまでは、血反吐出ようが耐えてやろうじゃねえか!久しぶりに、熱くなってきたぜ!」

「僕も、レイヴァーを信じて待ちます。皆さん、ここは絶対に死守しましょう。」

「当たり前だ、若いの!ここを通りたければ、俺たち全員殺して見せろ!魔族の力の結晶共!」


ゼオン達は、城門を守る門番の如く戦闘を続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る