恋を予感させる甘くない物語

「現代社会において多数派の人間にとって、俺たちは異物だ」

屈託なくはつらつと絡んでくる『少女』と、不機嫌一辺倒な『先生』。ああ、『先生』も本当は『少女』のことが好きなのに、素直になれないのねと思いきや、『先生』には人間を愛することをためらう秘密がありました。

魔法使い。

魔法を使い、人間よりはるかに長い寿命を持っているのです。それだけの違い。でも、それは人間にとって大きな違いでした。その『違い』ゆえに、人間たちは魔法使いに平然と石を投げ、迫害します。

『先生』にも、隠遁生活を決意させる辛い出来事がありました。その残酷な事件を引き起こした人間たち。その事件以降一緒に暮らすようになった人間の『少女』。もう人間に心を動かさないよう、『先生』は交流を避け、自分の感情を押さえて生きていこうとしますが……。

春に続き、夏を冠する恋の物語です。痺れるような苦さのなかにほのかに湧きあがる甘味を感じられるような物語です。

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