小夜時雨、降れよ降れよと恋ひ願ふ

　遠い昔海だったこの場所には、ビルが覇を競うように生えている。そんな都会の喧騒からぽつりと離れたこの公園は、俺にとっては唯一の安息の場所だった。
　翡翠色の池の畔にポツンと佇む、俺だけの世界を描くことのできる箱庭。そんな俺だけの箱庭に、今日は先客がいた。
　都会の喧騒から隔絶された公園内の屋根付きベンチから、今日もバイオリンの音色が聞こえる。