寒い地方のお話でしょうか。なんらかの終末的世界でのお隣さん同士の交流譚です。きちんと物語を書こうという意識を感じられて好印象でした。謎めいた世界はあえて克明には書き出さずにドラマを配置した印象でした。なんらかの続編があるならば読みたいと思わせました。
八月五日の深夜。茹だりそうな熱気が支配しているべき夏の夜に、世界の全てが凍っていた。異常な事態の中で主人公と「お隣さん」と自分を呼ぶ少女との交流が、淡々とした筆致で静かに描かれます。読み終えた時に、切なくもほのかに温かい印象が残る短編です。
謎のお隣さんという、一つの切っ掛けから、世界の全容が徐々に明かされます。散りばめられた伏線を、どうか隅まで逃さないよう、じっくり読む事をお勧めします。季節の設定が面白く、狼の話には泣きそうになりました。誰かが傍にいた事が、彼らにとって一番の幸いだったかもしれない。そう、しみじみと感じました。
身体が寒さに蝕まれても、世界が氷に閉ざされても—— ——心は互いを温め合った。
彼らの、終焉に何かやさしさと、ほかの何かを感じました。面白かったです。
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