きっといつまでも忘れることの無い作品です。

読み終えてしまったことが悲しくなる、一生心に残るような作品でした。

現実世界で事故に遭った若葉が、メイドのアリーシャとして、
昔のヨーロッパ風の世界に転生する。
そしてそこで美少年と恋をする……という単純な物語では、全くない。

この物語の主人公は若葉であり、アリーシャ。
二人の全く別の女性が一つの肉体の中に宿っていて
互いに影響を及ぼし合うところが面白いです。

アリーシャは少女時代は、自信なさげなところが目立っていましたが
時間の経過と共に賢く強い大人の女性に。
けれどやっぱり言いよどんだり、空回りしてしまう愛らしさも。
時代を切り拓いていくような豪胆なところ、
女性らしい魅力が両立したヒロインでした。

リヒャルトとの身分違いの恋……
二人の切なさと互いに対するどこまでも一途で誠実な想いに胸を打たれます。


若葉は、最初はアリーシャより年上ということもあり
知識豊富で冷静なお姉さん的な存在でしたが、
卑屈だったり幼稚なところがあって……

エックハルトを導いてあげる母的な存在かと思っていましたが、
話が進むにつれ、二人は似ているのだな、と感じました。

エックハルトとの恋愛は、作中で一番悲しく美しかったです。
彼を愛する体を持たない若葉、
そして、狂気を失ってしまえば彼女を認識できなくなるような、
目に見えない恋をするエックハルト。

例えあの世界のエックハルトが若葉に会えなかったのだとしても、
それでもやっぱりエックハルトはエックハルトで
若葉とのハッピーエンドを迎えられたのだと信じます。
結婚式に現れたアリーシャ達の姿が、そんな奇跡を感じさせてくれました。


皆が皆、大人になって、家庭を持って、
ひとつの物語を終え、続きの物語を紡いでいく……
変化を寂しく感じてしまうくらい感受移入して、愛着をもって、読み進めていました。

人間関係の描き方が何よりも素晴らしいですが
精巧・綿密に練られた世界感、設定がそれを更に際立てています。

とにかく、つまり、最高でした!!

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