このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(200文字)
不気味かつ悍ましい作風・文体。だがそれでも読む手が止まらないのは緻密に練られた設定や世界観が私の好奇心をくすぐるからだろう。恐ろしくどこか神秘的な世界観から目を背けたくとも、この先に待つ展開を知りたいという思いがこの世界から私をかえしてくれなかった。
隔絶された村社会の因習。物語は最初から最後まで、じわじわ忍び寄るような不気味さに溢れています。しかしながらそれを描写する文章は雰囲気たっぷりで趣があり、美しさを感じました。恐ろしい匣、数え歌、神の存在……まるで自分が調査員のように、真実に少しずつ近づいていく……。最後は分かったような気にもなりましたが、続きが読みたくなる物語でした!
章ごとに読みごたえがありました。物語のトーンに統一感があって、集中して読めました。以前、戦前の伝奇、怪奇小説を読んだ時に似た雰囲気と面白さを感じました。
短編で読みやすくかつ文体や言葉回しからも昭和の集落らしさを漂わせる様。当然ながらそうした文体によく似合ったオチは不気味さをより大きく増していく……。とても良き作品です!