022 初めての戦闘訓練
昼食後の十三時、訓練場にアンゲロイの全員が集められた。整列した私たちの前にはメケイラがいる。
「今日は組練習だ。前回とは違う場所を想定した戦闘訓練をしてもらう。一応、組によってランダムにしている。有意義な時間となるように」
「「「了解!」」」
「ただし、
マジか。でも組んだばっかだし、そうなるのも納得だね。
私とティアは再び「了解」と返事をした。
メケイラに誘導されて一番奥の部屋に入ると、いきなり「はい、ストップ」と命令された。
「
質問されたということは、おそらくもう教わったことなのだろう。思い出せ。
「コミュニカを……かざす」
「どこに」
「えぇっと……」
気まずい空気が流れる。
私の記憶違いか、そこまで教えてもらった覚えがない。……が、すぐ横にある壁に、それらしき機械が設置されている。
「こ、これに?」
「正解だ」
ホッと
「この読み取り機にコミュニカをかざす。そしたらコミュニカの画面が自動で訓練モードに変わる。やってみな」
言われたとおりにすると、コミュニカから『訓練モードに切り替えます』という音声が流れた。
この後もメケイラの指示でコミュニカの操作の仕方を教わり、人数、訓練内容、訓練場所などを指定していった。
これで訓練の準備は整った。
『戦闘基礎、アンゲロイ二名、住宅地Fでの訓練を開始します』
自動音声が読み取り機から流れると、部屋が徐々に暗くなり、仮想空間と化した。
気づくと、家々に囲まれた空き地の真ん中に立っていた。コミュニカのマップを開いて現在地を確認する。ここは首都の隣町の郊外らしい。
現在地から南西六〇〇メートルのところに、宿主の居場所を示す印がついている。
「今回は戦闘訓練だから、規制線のことは考えなくてもいいからな。単純に二人の戦闘力と相性を見たいだけだ」
後ろからメケイラの声が飛んできた。
振り返り、腕を組んでいるメケイラに返事をする。
「そうなれば、
「オッケー。サモンヴォカテ=クシナダヒメ!」
私の右手に刀が、ティアの左手にハンドガンが握られる。
ティアは「戦闘服に着替えましょう」と、空いている右手を差し出した。私は左手で握り返すと、例のメイド服の亜種のような戦闘服を身にまとった。アナライザースコープも耳に装着された。
「この二人はこういう戦闘服か」
と、メケイラの声がしたものの、ティアに手を引かれ、余計なことを考える隙はなかった。
コミュニカのマップを頼りに、宿主が待つところに走っていく。
「宿主はこの家の中にいるようね」
ティアが指さす方向から、確かに物騒な音が聞こえる。壁に物が当たる音、パリンと物が割れる音、そしてヒトのようであり獣のようでもある
「外に逃がさないようにした方がいい?」
「ええ、被害を広げてはいけませんもの」
となると、狭い空間での戦闘になりそうだ。これが住宅地での戦闘の特徴だろうか。
「あたくしが先導いたしますわ。ついてきてくださる?」
「了解」
玄関のドアを静かに開き、家の中に侵入した。
引き金に指を添え、ハンドガンを構えながら、忍び足で進むティア。私もすぐ攻撃できる構えを取りながら、彼女の後ろにピタリとつく。
荒らされたリビングを通り過ぎ、別の部屋のドアの前でティアが歩みを止めた。
「この部屋の中にいるわ」
半開きになっているドアの隙間から、ティアが中を伺おうとしたその時。
私の勘が、ティアをドアから遠ざけろと叫んだ。
彼女の上腕を
「⁉︎」
何かが爆発したような音とともに、ドアの真ん中にヒトの
私はティアの腕を掴んだまま、「ヒィッ」と情けない声をあげてしまう。
「ありがとう存じますわ」
一瞬だけこちらを見たティアは、右腕を横に上げて私を
「ティア、ここは一気に行った方がいいかもしれない」
「そうですわね、ドアを蹴り飛ばしましょう」
ティアはドアノブをひねって半開きにすると、蹴りを入れる。
勢いをつけて開くドアの隙間から、宿主の姿を確認したとたん、私はその隙間に飛び込んでいた。
「はあっ!」
斬撃が宿主の体に命中し、先制攻撃に成功した。
倒れた宿主に、ティアがすかさず連射を浴びさせる。
しかし、ハンドガンが弾切れになった隙に、宿主は近くに落ちていたペンをティアに投げつけた。
「危ない!」
戦闘服の効果により、体から十センチくらい離れたところで見えないバリアが働き、ペンは床へと落ちた。
アナライザースコープに『損耗率:92%』と表示された。
「
「とっさに体が動いちゃった。これくらいダメージ受けるんだね」
昨日とは違う。これは訓練だ。避けるだけでなく、攻撃を受けるのも一つの訓練である。結果論だが。
そうこうしている間に、宿主が立ち上がろうとしたので、瞬時に胴を攻撃した。
宿主は完全に倒れ込んだ。起き上がる力もないようだ。
「花恋、浄化しますわよ」
ティアは一際大きな緑の弾を発射し、「ノブレス!」と浄化の言葉を唱える。宿主がその弾に覆われると、私は胸を目がけて刀を突き刺す。
「
突き刺したところから
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