014 先輩と武器と戦闘服

 私たちはヘリコプターに乗り込む。全部で六席あるうちの、前の二席にアルカイの二人が、真ん中の二席に私とティアが座った。

 全員がシートベルトをつけ終わると、自動運転でヘリコプターが飛び立った。


 お姉さん先輩が振り向く。


「そういえばまだ自己紹介してなかった! うちはミーガン・フォークナー!」


 ミーガンは赤髪のショートヘアで、目の色も暗めの赤。元気がみなぎっており、しゃべり方にも表れている。身長はこの中で一番高い。


 お兄さん先輩もこちらに振り向いて自己紹介する。


「僕はエリヤ・シェイファー。よろしくねぇ」


 エリヤは色素が薄めの茶髪で、全体的な髪の長さは普通くらい。だが、何といっても右目を覆う前髪がトレードマークだ。目の色は淡い青。雰囲気や話し方は柔らかい。小柄で、身長は私と同じか少し高いくらいである。


「ご存知だとは思いますが、私は月城つきしろ花恋かれんです。昨日入隊したばかりなので、ご指導よろしくお願いします」


 社交辞令として、一応名乗っておく。


「おお、そんなにかしこまらくていいよ!」

「ドミューニョ部隊はタメ口でも大丈夫だからねぇ」


 あっ、そうだった。

 昨日ティアからも同じことを言われたものの、癖というのは抜けないものだ。


「あたくしはセレスティア・フィオナ・ウィザーソンですわ。ティアとお呼びくださいまし」


 ティアも私に続けて自己紹介をした。


「ウィザーソン……もしかして魔法使える人⁉︎」


 ティアに目を移すと、少しだけ複雑そうな顔をしたが、すぐににこやかな笑顔になった。


「ええ。ですけれど、今は科学技術のおかげで使う機会はほぼございませんことよ」

「ここ十年くらいで一気に技術が進歩したもんねぇ」


 と、目を細めるエリヤ。

 ……えっ? エリヤ先輩っていくつなの?


「じゃあお互いの自己紹介も済んだことだし、作戦会議しよっか。マップ開いて」


 ミーガンがコミュニカを取り出したので、私もポケットから取り出して、コミュニカのロックを解除する。


「今向かってる宿主が、識別番号:二五ふたごーね。このヘリはそこから距離二〇〇のところにある、ここの空き地に着陸する予定」


 タッチペンで線を描きながら教えてくれるので、とてもわかりやすい。学校の授業を思い出す。


「普通、一般兵は六人で出撃するんだけど、さっきメケイラが、うちとエリヤと新人二人でよろしくとか言ってきやがったから、人が足りないわけ」


 エリヤが渋い顔をしていたのを思い出して、うんうんとうなずく。


「だからティアと花恋には、救護だけじゃなくて、規制線を張るのもやってほしいの。うちらはすぐに戦いに行きたいからさ」


 何か仕事増えたんだけど。


「あの、私、規制線張ったことなくて、救護活動もしたことなくて……」

「あちゃー、そうだよね、昨日入ったばかりだもんね。まったく、メケイラはどういう考えで組ませたんだろ」


 私をフォローしながら、大きなため息をつくミーガン。即座にティアが名乗り出る。


「あたくしが教えますので、ご心配なさらず」

「おお、いける?」

「あたくしはもう何回も教わりましたので大丈夫ですわ。さらに花恋は飲みこみがお早いですもの」

「じゃあ二人に任せるよ」


 私とティアは同時に「了解」と答えた。






『まもなく到着です。まもなく到着です』


 女性くらいの声の高さと思われる自動音声が流れた。


「もう一度確認するけど、うちらはすぐに宿主のとこに行くから、二人は規制線を張る。うちらが宿主を浄化したら、二人は救護活動をする」


 頭の中で反芻はんすうし、返事をしたところで目的地に着いた。ヘリコプターは、ほぼ振動せずに空き地に降り立った。


「サモンヴォカテ=マレウス・フェレウス!」

「サモンヴォカテ=インスティンクトゥス」


 先輩たちはヘリコプターから降りると同時に、流れるように武器ペスティを召喚した。かっこいい。


 ミーガンは巨大なハンマーの武器ペスティを、エリヤはライフル型の武器ペスティを手にした。

 二人とも、見た目に反して大きい武器である。女性が大きなハンマーを片手で担ぎ、小柄な男性が大きなライフルを肩に乗せているのだ。


「御二方ともパワフルでいらっしゃるのね」


 ティアも目を見張っている。


「じゃあ、よろしくね!」


 そう私たちに言うと、ミーガンとエリヤは同時に指パッチンをした。


 二人の服が軍服から、数百年前に戦士が着ていたらしい皮よろいの衣装に変わったのだ。


 当の二人は、その衣装になったとたんに、猛スピードで走り去ってしまった。


「なになに⁉︎ 服変わったんだけど!」

「説明は移動しながらいたしますわ! あたくしについてきなさい!」


 ティアが走り出してしまったので、慌てて後を追う私。


「実は軍服の他に、戦闘服というのがございますの。戦闘服は防御力が上がり、アナライザーインカムというものも装着されますわ」

「なんか しらない たんごが でてきた」

「アナライザーインカムは説明が難しいですわ……」


 まぁ、いずれ私もつけることになるんでしょ。これは置いておいて別の質問を。


「じゃあ、私たちも皮っぽいあの服を着るの?」

「いいえ、組によって戦闘服の見た目は異なりますわ。ですけれど、組の二人の戦闘服のテーマは共通しておりますの。相棒パートナーが変わりましたら、戦闘服も変わりますの」


 ということは、今まで三人と相棒パートナーを組んだティアなら……。


「これまでのティアの戦闘服はどんなのだったの?」

「ライダースーツ、アウスティの伝統衣装、ビジネススーツですわね」

「振り幅すごっ。もはやコスプレじゃん」

「そう仰られると……認めざるを得ませんわ……」


 苦笑するティア。

 ツッコミはしたが、私たちの戦闘服はどのようなものなのか、内心楽しみにしている自分がいた。

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