017 最悪コンビの最高の以心伝心
だが、服に気をとられている場合ではない。この身が車のようなスピードで前に進んでいるからだ。しかもここは空中である。
私と同時に壁を蹴って飛び出したティアは、ハンドガンを構えて宿主に向けて連射した。緑色に光る弾である。
攻撃にひるみつつ、ティアの方を向いた宿主。この機会を逃してはならない。
「ハッ!」
宿主の胴を狙って刀を振るう。刃と胴が触れたところからは白い光が零れ出した。勢いをつけて攻撃したおかげだろうか、宿主は地面に倒れこんだ。
「新人! どうして!」
ミーガンの驚嘆の声が聞こえる。
軍の規則のことだろう。ええ、犯しましたよ。犯してしまいましたよ。
「私は、軍人として、目の前で先輩を失いたくないからです!」
半身を起こした宿主に、再び刃をおみまいする。
「お仲間を失いたくない。そのために行動することは、決して軽率な行動ではございませんわ!」
起き上がろうとする宿主の腕を狙い撃ちするティア。
「おぉ、すごい新人と組んだもんだねぇ」
横方向から青色の弾が飛んできた。弾を撃った主はエリヤだった。
前髪で隠れていたはずの右目で照準を合わせている。その目は鋭いが、口元は緩んでニヤッとしているように見える。
ミーガンが攻撃したついでに私の前に降り立った。頭を二回ポンポンと
「ミーガン先輩、私はどうしたらいいですか?」
「奴はさっきみたいなエネルギー波を打ってくるから、
確かに、ミーガン先輩みたいなハンマーの
私は刀を構え、ミーガンが動き出すのを待つ。
宿主がティアやエリヤの銃に抵抗するべく、エネルギー波を発射した。
横目でミーガンがちらっと動くのと同時に、私は宿主に向かって走り出した。刀を両手で持ち直し、下からすくい上げるようにエネルギー波を切り裂いた。
ミーガンはうまく切れ目に入りこみ、宿主に重い一撃を食らわせる。
「やった!」
連携がうまくいき、小さくガッツポーズしてしまった。
「よしみんな、そのまま浄化するよ!」
戦場では喜ぶ隙もないようだ。
ミーガン以外の三人で了解と同意すると、ティアとエリヤは、宿主を挟んで向かい合う位置に瞬時に移動した。
「花恋はうちの反対側に行って!」
「了解!」
ミーガンの指示に従うと、私たち四人が均等に宿主を囲んでいる形になった。そういうことか。
そして、ミーガンが人差し指をまっすぐ宿主に向けると、それを合図に「ディミッテ!」とエリヤが唱えて大きいエネルギー弾を撃った。
今度は「ノブレス!」とティアも大きな弾を撃ち、「テスタス!」とミーガンがありったけの力をこめて宿主を打ち飛ばす。
もはやオーバーキル状態の宿主が、こちらに豪速で向かってくる。
「
宿主の胸をこの刀で突いた。突いたところから白く優しい光が
宿主は力を失ったように、ゆっくりと倒れていった。
「よかったぁ、浄化間に合ったねぇ」
宿主の下に歩いてきて
誰も失わずに済んだ。ちゃんと宿主も浄化できたっぽい。心底
「あっそうだ。救護活動! どうやってやるんですか?」
「よしよし、ちゃんと覚えてた!」
ミーガンもこちらにやってきて、親指を立ててゆるりとうなずく。
「うちがお手本見せるから、見てて。まず耳についてる『アナライザーインカム』ってやつに三回触って。そしたら救護班と
そう言うと「こちら
さらにアナライザーインカムとくっついている、四角いレンズの
「こうすると、宿主が3Dスキャンされて救護班にこの情報が届くから。この情報からどういう治療が必要か、向こうで判断してくれるらしいよ」
スマートフォンでこういうことができるのは知っていたが、ワンタッチでできるものとは。さすが最新技術が駆使されたドミューニョ部隊だ。
「えっと、宿主の救護活動っていうのは、まず救護班に連絡して、そのあとにこれでスキャンすれば大丈夫ってことですか?」
「そうそう! あとは連絡するときのセリフを覚えれば完璧!」
「だから私の場合だと『こちら
「何この子、完璧じゃん!」
目を丸くしてエリヤに同意を求めるミーガン。
すごくヨイショされている気が……先輩が言ってたことを繰り返しただけなんだけどな。
「さっきティアが先輩たちに連絡するときに言ってたので、耳に残ってました」
「花恋の飲みこみが早いと申し上げました理由、ご理解いただけまして?」
なぜかティアが
「「うん、よくわかった」よ〜」と舌を巻く先輩たち。
ああ、ここに来てよかった。ストレーガ人のみんなが人間を悪く思ってるわけじゃないってことを知れた。
私を『人間』ではなく『人』として見てくれることに、これほどのありがたみを感じたことがあろうか。
私は刀を
どこからかヘリコプターの音が聞こえてきた。救護班のものかと思ったが違った。増援に来た
「あれ? 俺たちもう用済みじゃね?」
「これ、今終わった感じか」
そう言って、二人がヘリコプターのある場所に戻ろうとしたその瞬間。
バタッ
隣にいたはずの先輩が、私の視界から消えていた。
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