芭蕉、句作への道にあったもの

芭蕉の句を知らない日本人は稀でしょう。
とはいえ、俳聖の生み出した、視覚的、音律的、そしてミステリアスな十七文字の背景を、私は知りません。
わからなければ、逆説的に想像が広がりもしますが、本作は歴史ものを得意となさる筆者の作品にあっても、想像と事実を繋げる意味においては、特に優れていると言えるでしょう。
芭蕉の歩んだ環境や、出会い、時代、そして、思い入れの深い人物との関わり合い。それらの要素が丹念に編み込まれ、ラストには、かの句へと導かれる過程と感慨が見事に一致して、芭蕉の切なる想いが結実します。

情景が目に浮かび、耳に聞こえ、余韻を残す物語です。ぜひともご一読ください。

その他のおすすめレビュー

カワセミさんの他のおすすめレビュー158