第3話 第一村人発見
セカンドアース、心臓動力部第3区画。
ここにはセカンドアースのサブコンデンサと呼ばれるものが厳重に格納されている。言わば第三の心臓である。
セカンドアース存続の鍵となる機体。そして抑止力の象徴。
「『All physical variables prediction calculation rewriting device.』全物理変数予測演算書換装置。未来を書き換える事が可能な演算装置の1つ。スタンドアローンであるシステムで唯一外部接触が可能なネットワーク型演算装置。サーバーが負荷に耐えきれないと封印していたが、今この瞬間に封印が解かれる。ケケケさん。これをラプラスの箱と言わずになんと言うんですか………」
セカンドマイスター達の成果とも言える1つがこのユニットモジュール。全物理変数予測演算書換装置。未来を知り、そのページを書き換える事を目的としたユニットモジュール。
メタルヘブンユニバースでは起動したらサーバーが壊れて二度と復旧しないと公式から言われたラプラスの箱。
ずっと一位に居座っていられた抑止力の1つだ。
それが今、新たな封印と共にここから解放される。
―――――
聖協会都市マグナマグナム 重要会議老会13人
暗い室内の中。どこから来ているのかわからない光源に淡く照らされた13人の老人達。
この老人達は聖協会都市マグナマグナムを支配する最高権力者。それなりの実績を持っている人達である。
「封印が解かれた………と?」
「はい。封印が解かれたと巫女が言われました。その時の発言を記録したものはこちらに……」
「どの封印かは教えてくれても良いんじゃないか?」
「ラプラスと呼ばれる神の算盤のようです。未来がわかるとか」
「未来が?まあ、しかし。そこまで脅威ではないか」
「ええ。しかし、確保しなくてはならない我が国の秘宝であることは確かです。早急に捜索をしなくては……」
「しかし我が協会は未だにあの魔物共と戦っているではないか。これでは捜索をしようにも暗しか手が無くては………」
その問題に直面した12人は黙り込んだ。しかし、13人目の人が立ち上がる。老人ではなく、若い人だった。
「ならば私達にお任せを。我々の騎士団ならば必ずやそのラプラスの箱とやらをお持ちいたしましょう」
その勇気ある言葉に歓声が上がる。
「私は頼んでよろしいかと」
「私共も……」
次々と賛成の意見が上がり、満場一致となった。
「それではここで失礼致す」
「うむ……我ら聖協会の導きを得て来るが良い」
「「「「「我等に神のお導きを……」」」」」
「ええ、お導きを……」
そう言い残し去っていった若者。その背後に二人の騎士と思わしき者達が付き添いに来た。
「よろしかったので?」
「ああ。慎重に事は運べ。ラプラスの箱さえあれば我々はまたあの時代に戻ることができるのだからな……」
「「ハッ!!仰せのままに……」」
ラプラスの箱。これさえあれば我々の時代は戻る。進化という形で戻ってくるのだ。その為ならばなんとしてでも探さなければならない……
「………確か王都側だったか。久し振りに知人にでも会いに行くか」
彼の口に笑みが溢れた。
―――――
セカンドアース 転移後2日経過 朝
転移後から2日となった。今日は9日。想定通りの運びとなってしまった。
カルマノードはまだ完成してないが、地上では簡易拠点が今日完成するはずだ。しかし、それまでにはあらゆる問題が発生していた。
怪物。アルドノイド達が居た。
機械的な部品は見当たらなかったが、敵対的な行動。低耐久だが物量が多い。アルドノイドだと仮定し、現在地はバレてるかただの移動だったかと考えている。しかし最悪は想定するべきだ。
簡易拠点の周りに防護壁を建設することが追加された。また、森の方角からやってきた為森の内部にセンサーを大量に配置。反対側には監視塔を置き警戒する。
また、アルドノイドは地中から現れる事がある為森の内部には高感度地中探査機を設置し、反対側には広域地中探査機を設置した。
これで後は空だけを警戒することになった。とはいえ、セカンドアースは地中の中にある為危険な事には変わりないのだが……
「確か今日は高効率太陽光パネルの設置だったか。あとは………特になかったっけ?ならカルマノードでも見に行くか……」
特にやる事が無くなってしまった俺は船内を見回る事にした。
格納庫は今日も365日24時間体制で年中無休でやっている。可哀想な事だと他人事に思うが、今度労いに休暇を与えるか………ああ、しかしブラック企業に所属している社員は休暇は欲しくてもその時になればいざ何をやりたいのかわからなくなると聞いた事がある。確かメメさんが言ってたか……?
ふむ………ならば外へ出れるようになってからが良いか。娯楽施設なんて船内にはほとんど無いからな。酒場しか無い。
「となればいち早く安全を確保せねばか……」
「おはようございます。マスター」
廊下を歩いていると副官NPCとバッタリ出くわした。
「ああ、おはよう。今日の予定を聞いても良いか?」
「はい。今日の予定は高効率太陽光パネルの設置、ターレット、対空レーダー、無人機の散布となります」
「となると船内でやる事は無いか」
「マスター達には日々頑張ってもらっています。今日はゆっくりと休息を頂いてください」
「わかった。では後は頼む」
「了解致しました」
そう言い残し副官NPCは去っていった………そういえば副官NPCの名前ってなんだっけ?
な〜んかワンゴロニャンさんが何度も言ってたような……
「まあ、後で誰かに聞けばわかるだろう」
なんとかなるだろうと思い格納庫へ足を進めた。
―――――
私、このセカンドアースの副艦長の代わりになるメリルという名のただの一般兵なんですが、突然宇宙空間へ出ると言ったかと思えば地下に居て、そこから今地上に這い出たら敵が待ち構えていてと……今生きてるのが不思議なような感覚に見舞われています。
ですが、艦長であるセカンドマイスターマスターのカルマ様はもっと大変なはずです!!こんな所でへばる訳にはいきません!!あと、単純にズル休みで訓練所送りにされたくありません。あそこの教官は鬼です。滅茶苦茶鬼です。
そんなこんなで二日目を生き延びれている事にマイスター様達に感謝しつつ日程の確認を行った後は監視という名の退屈な時間を過ごす事になります。
とはいえ一時も気を抜く事はできません!!ここは未知の世界です!!何が起きても不思議ではありません!!
そう心構えていた時でした。あの報告が上がったのは……
「あの……地上の兵士から緊急連絡なのですが………」
「緊急連絡!?何がありました!?」
オペレーターから緊急連絡の報告に心がビクッとしましたが、顔には出しません。副官ですから。
そんな私に何か言いづらそうに声を出そうとするオペレーター。大丈夫です。未知の世界とはいえ私達は最強なのですから。
「えっとですね………そのぉ………………アルドノイドが対話を申し出たと………」
「……………は?」
……………何を言ってるんですか?
―――――
「それで私が呼ばれたと」
「はい。お手数をおかけして申し訳ございません。ですが、少々私達では対応しかねる問題でしたので………」
突然敵が対話してきたと報告された俺は内心焦りながら司令室に向かった。しかし、よくよく考えればそれは本当にアルドノイドか?
アルドノイドは対話なんて1度もする事が無いのは公式から出ている。とすればこの星の生物か?
「それは本当にアルドノイドか?確認してくれ」
「承知致しました」
オペレーターが兵士に問い合わせる。待つこと数分。兵士から返答が出た。
「えっと、アルドノイドではなく。コボルトという種族のようです。また、発言している言語は日本語でした」
コボルト?確か狼のような毛皮を持つ亜人だったか?いや、狼のような人だったか?まあ、どちらにせよ対話という平和的交渉と知性を持っている事には違いない。
「…………私が出よう」
「マスター!?」
「ま、マスター様。流石にそれはお止め頂きたいのですが……」
オペレーターがやんわりとやめて欲しいと目で、口で訴える。確かに今ここでたった一人のプレイヤーが危機に晒されるのは不味い。しかしこのままのほうが不味いのだ。すまない。今度なにか労おう。
「いや、向こうから出てきてくれているのなら。我々も相応の礼儀を示さないとならない」
「しかし……」
「聞かず、見ず、言わずの相手が信用できる訳がない。手配しろ」
「………ハッ!!しかし、マスターの機体は今ここには……」
「ああ、言ってなかったか。今新しく作ってもらった。前の機体とは違い私の専用機ではないがな」
「え?」
副官NPC………えっと、確か…………
「メリル様!!顔!!顔!!」
ああ、メリル。そうだった。メリルだったか。すっかり忘れてた。
「メリル。後で機体についてのデータを渡そう。今は時間が惜しい」
「あっ、ハッ!!了解しました!!して、機体名は?」
「Karma Nodeだ。漢字で因果節点になるやつだ。機体情報はまだだからとりあえずは告知だけしておいてくれ」
「わかりました。警護はこちらでよろしいでしょうか?」
「頼む」
直ぐ様出撃準備に移る。整備士には面倒を掛けた。足を向けて寝れないな。
セカンドアースの真下にて、アホ毛ロボット稼ぎえり デルタイオン @min-0042
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