第2話 日の目を見る設計図
「現状確認を始めよう。報告を」
司令室に戻った私は早速副官NPCを招集し、現状確認できている事を報告するよう命令した。
「ハッ。現状このセカンドアースは地中内部に転移しており、詳しい原因については調査しているのですがおそらく転移の形で土と入れ替わりをしたと思われます。予想される現在地は地上からおよそ50m。もしくはそれ以上かと思われます」
「現在地については理解した。食料、酸素等はどうなっている?」
「はい。食料については現在クランボックス内にある食料で1週間は凌げるかと……」
「一週間か……」
確か食料は生産施設があったはずだ。そこにエネルギーを回せばなんとかなる……か?
「生産施設は稼働できるか?」
「はい。しかし、転移前に多大なエネルギーを使用していましたので……もって3日かと………」
3日か………食料はNPC達も必要だ。水、食料、睡眠。NPCは生物と同じく休息とエネルギー補給を行わなければ死んでしまう。
「早急に地上へ出たい。セカンドアースを地上に出すことは可能か?」
「不可能ではありませんが、現在行える方法は全て多大な損害を出してしまいます。セカンドアースを出すのは地上に調査隊を派遣してからが得策かと……」
「よし、ならばその方向で行おう。もしもの場合はセカンドアースを放棄する。損害はあまり出すなよ」
「ハッ!!」
とりあえずはこれで様子見だろう。しかし、ここまで会話したが、こんなにも自然とは………やはり本物だと断定したほうが良いか。となると多分リアリティが付与されてるはずだ。死んだら復活できないとか………そういったのがあるかもしれない。
「それだけは避けねばなるまい。ワンゴロニャンさんとオルチンさんに殺される」
「どうかなさいましたか?」
「いや、独り言だ。気にするな。私は席を外す。何かあれば即座に呼べ」
「ハッ!」
そう言い私は司令室を離れ格納庫へ向かっている。道中すれ違ったNPC全員が敬礼のポーズをとる。しかし、メタルヘブンユニバースとは違い一人一人機械のような精密さは無かった。洗練されているが、指先、目線、衣類のシワ、脚の開き角度。どれをとっても全員違った。
リアルだ。とてつもなくリアルだ。そう考えると不思議と吐き気がする。
それもそうか。ホラーゲームが現実世界に無いとわかるからこそ楽しいのと同じように、人は闘争と戦争の区別がある。戦うのは好きだ。しかし、それは現実にはなってほしくない。
現実逃避してるのに現実をそこに叩き込まれたら誰でも拒否反応を起こすだろう。
だがここはゲームだ。ならば、やりようはある。現実でできない事が現実になったならば
その為のロボット。その為に作られた設計図。
ワンゴロニャンさん。オルチンさん。ケケケさん。そして、田中さんさん。
もしかしたら、妄想が現実になるかもですよ。
「設計士、整備士、プログラマーをここに呼んで来い。緊急事態だ」
―――――
「うむ………現実味に欠ける設計図じゃな。しかし、やれん事は無い。ここに記載しておる性能の4割を犠牲にすればじゃが……」
「プログラムについては最高。このままで良いけど、操作盤との連結については調整しなきゃいけないかも。パイロット死ぬよこれ」
「こんなの作るんですか!?整備士泣かせじゃないですか!?ていうかロマンありませんか!?ここの装甲不要でしょう!?」
上から設計士、プログラマー、整備士だ。ワンゴロニャンさんがデザインし、オルチンさんがそれに収まる内部構造を構想。ケケケさんがコックピットとこれを動かす為のプログラムを書いた所で作らなかった駄作の1つらしいが現状必要なのは今ある量産品ではなく、指揮官機。
メタルヘブンユニバースではNPCは細かな戦闘行動も行えず、何があったのかすら報告できないただの数合わせとしか思われていなかった。だがしかし、ここまで自然な対応をするNPCならば今まで不可能だった戦術も可能になるはず。そう考えた結果この設計図を思い出したのだ。
全領域対応汎用ヒト型指揮官機。名前は確か……
「Karma Node……因果節点とは大層な名じゃな」
Karma Node.因果節点という名のこの機体は情報収集、処理、伝達に優れた情報戦特化型の機体。メタルヘブンユニバースの設定通りならばこれを超える物は無い。
「この頭部メインアイの上にある狐の嫁入りは取り外し不可能なのどうにかなりませんか……?せめて可動式にしてくれれば……」
文句を言う整備士。安心しろ。そこは前後に可動できる。
「狐の耳に狐のしっぽ………でもなんでしっぽが頭に?」
「それですよ!!超極小粒子情報端末散布装置!!それを4852本!!中心にそれを演算する広域型複合レーダーレイン!!推定処理範囲15万8000km!!更に狐の嫁入りと狐の立て耳も合わせて80万9800km!!そんなの作るぐらいなら私この船降りますよ!!」
整備士がそこまで酷評するのは当たり前だ。なにせこんなもの作る事は不可能だからだ。
「そう言って降りないのはもう知ってる。諦めるべき」
「ラプラス!?」
確信したように説得するプログラマー。ラプラスはケケケさんが初めて育成した言わば娘。言動も受け継いでるようだ。
「ラプラスの言う通りじゃ。諦めいアキラ」
「ベルまで………はぁ……わかった!!作りゃ良いんだろ!?マスターさんも本当に良いんですね!?でもこのアホ毛レーダーについてはどうやっても無理ですよ!!」
「ああ。それについてはアテがある」
「………ま、まさか」
ラプラスが驚く。まあ、無理もない。作れないなら取るのだ。民家のタンスから15ゴールドをゲットするように、セカンドアースから少し頂戴させてもらおう……
「となると、この機体設計図。これは増加装甲になるか」
「プログラムも書き換え不可能。不思議に思ってた部分も今、納得した」
「はぁ………リスクが高すぎる。こんなのならアホ毛だけ抜き取れば…………それだと現状の在庫にあるやつじゃ性能不足だよなぁ………」
全員が納得したようだ。ならば取りに行こう。この機体を完成させる為に必須のセカンドアースの心臓を……
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