第4幕(4)

■長吉の家


       春。

       薪置き場脇の桜が満開。時々、花びらを風に散らす。

       戸口の外と内に長吉と母っちゃ、向かい合って立っている。

       長吉は、制帽を被り袴を履き、学生鞄を肩から下げている。


長吉   :「じゃあ、母っちゃ。行って来るな。」

母っちゃ :「しっかりと勉強するだぞ。」

長吉   :「ああ。」

母っちゃ :「お国から学費を出してもらってるだかんな。」

長吉   :「分かってるって。‥‥、勉強して偉い人になって、母っちゃにも楽させてやっからな」

母っちゃ :「ははは‥‥。そこまでは期待してねって。」

       戸口をしめて、座敷に戻る。ちょっと目頭を押さえて、上手袖に退場。


       長吉、下手側に体の向きを変え、歩き出して、ふと立ち止まって桜を見上げる。


長吉   :「桜が満開だな?」


       桜が、花吹雪を散らす。


長吉   :「雪が降ってるみてえだな、おゆき?」


       桜が、再び花吹雪を散らす。

       長吉、舞台下手に向かって歩き出す。


(終幕)

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不思議なわらしっ子 デリカテッセン38 @Delicatessen38

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