憂き世噺

怖れるほど、弱くなる。
逃れ難き、理《ことわり》が支配する世界。

ここに、武の拮抗する、ふたりの女がいました。

力も技も同等で、戦えば、いつも引き分ける。
そんなふたりです。

彼女らは、強さの他にも、同じくするものがありました。
愛する男です。

想いを遂げられるのは、片方のみ。
はたして、ひとりは愛を実らせますが、自然、もうひとりは想い破れることに。

このとき、彼女らの間に、決定的な力の差が生まれました。

愛を手にした女が、怖れたのです。
失うことを。

一方で、恋に破れた女には、失うものがなく、怖れもなくなりました。

ゆえに訪れる、決着のとき――

はたして、愛は、怖れに打ち克てるのか。