第10話
「負けません!!体が動けているのに諦めるわけにはいけません!!」
「同情してくれるって考えた私が馬鹿だった。試合を続けよう」
ただ持久戦になっても、不利な状況はさらに加速してしまう。
打つ手は何もないのか。
攻撃手段が思いつかないため、ヨーヨーで物を持ち上げてゴミを投げることしかなかった。
「ゴミを投げるか。なるほど、私はカウンターできないし。攻撃方法としてありだね
ただ、その攻撃を躱せばいいのよ」
北海は攻撃を容易に躱しており、私の方に指を向けている。
気を抜いた瞬間、雪玉を落とすわけか。
続けても形勢が不利の状況はかわらない。
何か考えろ!!考えろ!!
攻撃の手は緩めたら、雪玉を作られてしまう。
ゴミを拾って投げての攻撃は無駄な抵抗だと分かってもやめない。
「君もしつこいよ。狙いが定まらない。こんなにしつこいとモテないよ」
北海は躱すことに集中しており、次の攻撃ができていない。
このまま泥仕合が続いてもやがては負けてしまうという焦りの気持ちを抑えつつ、冷静になって探し続ける。
『冷静になれば、きっと逆転の手があるかもしれない。すべての情報を体感しろ。小さな情報にこそ逆転の一手があるはず』
全ての物を感じようとすると、時がなぜか止まってみた。
いや、スローモーションに見えた気がする。
壊れてしまっている電化製品を投げて落ちた瞬間に
わずかだが、ビリッと電流が流れたような感じを受信した。
現代よりやや進んでいる科学技術を持った製品。衝撃を与えると電気を発生させてしまうこともできるかもしれない。
『わずかな逆転のチャンスをものにするかどうか私次第だ』
逆転の手を思付いてしまった私は、運を引き寄せることしかできなかった。
作戦上、どうしても攻撃の手緩んでしまうため北海にそこを察しらせないように演技をしないと
ゴミを投げ続ける展開も20分も続いたが、逆転の手を閃いてしまった私は戦いを終わらせにかかっている
「君、気付いていないと思うけど。10分くらい前から攻撃が緩んでいたこと気がついている?私の顔を凝視してプレッシャーかけても。君のきつそうな表情は隠しきれないよ」
北海は勝ち誇ったような顔になっており、勝利を確信しているようだった。
「分かりません。それは気のせいでしょう」
「戦いもさ。これで終わりになりそうだね」
「そこには、同意します」
私は不敵な笑いをうかべており、勝負を畳み込もうとしている。
燃えた丸太をヨーヨーで持って、ズンッと勢いをつけながら振り回す。
火の勢いは強く、運が悪ければこの砂場のゴミを引火してしまい砂浜が火に埋まりそうな勢いだ
「えっ!?」
北海は頭が真っ白になってしまった。
唐突の燃えた丸太の攻撃に混乱してしまい、丸太に向けて雪玉をぶつけた。
丸太の火はジュ~と勢いよく湯気を出しながら、火は収まっている。
湯気によって周りがうまく見えなかった。
『あっちも湯気でみえないはず』と油断していると体がワイヤーのようなもの締められてしまった。
ギューギューと固く縛られてしまってしまい、体の自由はない。
体をもぞもぞと抵抗しても、ワイヤーのようなものをほどけない。
あがいている最中に、ヨーヨーが北海のボタンを2つ押してしまった。
「勝負は終わりましたね。私の勝ちです」
勝負がついた私は、その場をすぐに立ち去ろうとする。
北海は一つ一つの出来事が整理できずに呆然としてしまう。
全てが一瞬で何が起こったのか分からない。
「私さ、何がなんやら分からないんだけど。説明してくれる?」
「いいですよ。」
私は立ち止まって、北海の方を向く。
「後半の10分は確かに攻撃をゆるんでいました。それは疲れたからではありません」
「つまり、演技に乗せられてしまったってこと!?」
「そういうことになります」
「前半の10分の攻撃は1つの腕を使って攻撃することに集中し、もう片手は防御用に空けてました。前半の10分は闇雲の攻撃が目的でした」
「後半の10分は二つのことを同時に行っていました。右手ではあなたへの攻撃をつづけて、左手では丸太の火を育てていました」
「火を育てるってここに火を起こすような道具なんてないよ」
「確率は低いですが、確実に発火させる物はあったんですよ。そう、電化製品のゴミ」
「リチウム電池を衝撃あたえることで火災になるってニュースで見たことがあったので、電化製品を落としまくって、火をつけていたんですよ」
「火を丸太に移して、あなたに攻撃しました。右手は燃えた丸太をもって、左手はあなたを捕縛するように片手をあけておきました。案の定、あなたは混乱しており、簡単に捕縛することができました」
淡々と作戦を述べて終わった私は、この場を立ち去ろうとしている。
「そっか。最後まであきらめなかったんだな。気持ちで負けたのかな。私の覚悟は偽物だった」
北海は何かに打ちのめされたようで、言葉が出なかった。
私はこの重い言葉で胸に刺さってしまった。
本物の思いを持った人の気持ちを自分のエゴのために破壊する。
運の要素が強く、精神なんて関係ないってことは重々に分かっている。
「気持ちの強さって結果に関係ないよ。技量と運がほとんどできていて、今回は運で勝っただけよ。頭の悪い神様の気まぐれに一喜一憂してもしょうがないよ」
罪悪感から言葉がスラスラと出てしまっている。
すべてが胸に刺さり心が苦しかった。
北海の表情を見ることが怖くてその場をすぐに立ち去ってしまった。
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