第4話
試験は開始されてしまった。
そして、受験者たちは急ぎ足で森の奥へと走り出す。
「りん、移動をよろしく頼む。点数は私が取りまくるから」
「わかった。行くよ」
私は手をすぐにヨーヨーに変えて、左小指のヨーヨーを碧にむけて発射させた。
碧の腹部にヨーヨーの糸を巻き付けた。
「結構がっつり締め付けちゃったけど痛くない?」
「大丈夫!!」
「私スピード出すから、振り落とされないでね」
右人差し指のヨーヨーの糸で、木の枝に引っ掛ける。
シャーと音を立てて、ワイヤーアクションをしているように木の枝に向かって移動していく。左人差し指で別の木枝に乗り移るように引っ掛けて、先ほど引っ掛けていた枝を話して移動していく。
シャーッ、シャーッとワイヤーの音が鳴り響いており、ダイナミックな移動が深淵の森中に響き渡る。
この音を聞いて、我ながらこんなにも移動が上手になっていることに感動している。
ワイヤーの糸が鋼のように強いことに着目して、締め付ける練習をおこなった。
鉄パイプをちぎるほどの高威力であったが、締め付けるのに20秒ほどの時間がかかってしまう。
諸々省略するが、工事現場の命縄を見て、ワイヤーアクションを閃いたわけだ。
そして、木を使ってワイヤーアクションの練習をメインで頑張ってきた。
「りん、意外にやるね。こんな使い方を考え付くなんてね!!流石私の女だよ」
こいつ、何言っているんだ。嫌なこと話している気もしたけど気のせいか
「ワイヤーの移動する音で聞こえないんだけど」
「りん!!だいたい30m斜め前にゴーレム発見!!」
碧は私の声を打ち消すように大声で指示をした。
暗い森ですぐに見つけきれるって、凄すぎでしょ!!
暗い森の中を青色に輝いた人差し指にはゴーレムがいる。どうやら、ゴーレムは私たちの方を見ていないようだった。
「了解!!」
私はゴーレムのいる方へと方向転換して、ゴーレムの方へ向かう。
シャーッと速度を上げて、距離を詰めていく。
およそ10mの距離を維持しながら、木の上で攻撃の隙を見定めている。
歩いているゴーレムが、右足を上げた瞬間を見定めていた。
『捉えた!!』
右足を上げた瞬間に、右人差し指のヨーヨーを右膝の下に向けてシャー―ッと投げつけた。
そして、右の膝の下をぎゅーと締め付けた。
人形や玩具のロボットは膝を曲げやすくするために、固定力を弱くする。おそらく、このゴーレムも例外ではない。
締め付ける力を徐々に上げていき、締め付ける力が膝を破壊するところまで引き上げた。
そして、ザクッと右足を切断し、バランスを崩したゴーレムは前方に倒れこんだ。
「頼んだ!!」
左小指のヨーヨーで持っている碧をゴーレムに向けて、勢いをつけて投げつけた。
「任された!!目はつぶって」
投げられた勢いを生かしながら、ゴーレムの胸に攻撃をする。
碧の拳は青い色の光で輝き始めており、拳に光が収縮し始めている。
眩しくて視覚がなくなりそうで、目を思わず閉じてしまった。
「碧光拳!!」
碧の技名の叫びとともに、閉じている目に光が若干入り込んでしまっている。
そして、じゅーーーと焼き切ったような音が耳に残る。
数秒がたち、静寂と暗闇が戻った。
「りん、目を上げていいよ」
ゴーレムの貫かれた胸は、じゅーと焼けたような音を立てながら破壊されてしまっている。
まじかよ。あの一瞬でこんなにやり切ってしまったのか。
無茶苦茶強いな。さすが主人公
「どうだった?」
「凄すぎて、ついていけないです。こんな暗闇でどうやってゴーレムを見つけきれたんですか?」
「あ~それね。目の体液をレーザーにかえて、簡易的な暗視スコープ作った感じかな。
ほかの人がやったら危険なことだからね。目焼き切るから。残念ながら、りんにはできない」
能力の応用。この世界求められる力か。
単純に強い能力を貰ってお終いではないって最高じゃないか。
能力バトル物は、こういう設定をこねくり回すのが最高。
「喜んでいる中悪いけどさ。これ見て。浮かれているりんは見るべきかな」
碧く輝いた人差し指の先には、握りつぶされた人間の頭が転がっていた。
ゴーレムの体には血がたくさんついており、たくさんの人を殺したことが分かる。
自分は思った以上にショックを受けていなかった。
彼女たちはゲームのキャラの一部だからか。自分のあっけなさに傷ついてしまった。
ただ、私はこのゲームは超雑鬼畜ゲーであることを思い出した。
ゲームをただ楽しんでいる自分に気がついてしまっており、自分の命は落とさないであろうと心のどこかで思っていた。
自分の残酷さに気がついてしまった。
その妹たちへの愛情すらもゲームの一部だったのかもしないと
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