ただ面白いだけではなく、読後に読者の中に残るものがあるように…そんな意図を感じるほどに考えさせられる事象が多く登場します。教訓をたっぷり含んだ「ありふれた物語」
最初から完璧な主人公であれば教訓も何も無いからでしょうね。主人公は頭が悪く要領も悪い善人です。なのでこの作品の欠点は読んでて頭の悪い主人公にイラっとするところです。たぶん感情移入もしにくいでしょう。
しかし誤解してはなりません。この作品は頭空っぽにして書いたような「頭の悪い作品」ではなく「頭の悪い主人公が登場する学びがありそうな作品」です。作品自体は良く考えて丁寧に書かれているというのがよくわかる作りをしています。全然ライトじゃないノベルって感じです。むしろ文量も内容も設定もメッセージもヘビーです。
なろうやカクヨムで量産されているライト過ぎるノベルに食傷気味の方には特にオススメの作品です。
最初はね、高いんです。壁が。とっつきにくさ10段階中9ぐらい。
主人公の境遇が、見てるだけで胸糞悪くなる前世からせっかく転生したのに負けずに胸糞悪くなります。
そして転生につきもののチート能力。これがまた神様的な存在から何の説明もされない。読者だってわからないけど主人公にもわからない。使ってみても何がどうなってるのか理解できない。主人公が何をしたのか、どうしてこうなってるのか、どういう条件で発動してるのか、何をどうする能力なのか、さっぱりわからない。作者も伝えきれてないと思う。まずここで読者が選別される気がする。
でもここを乗り越えると割と面白くなってきます。どん底の境遇からの立身譚、になるのかと思いきや主人公の望みが別なのは最初から変わらず、それを求めて旅に出る、で色々な出会いと別れ、そしてこの世界の成り立ちにまで図らずも近づいていく、みたいな感じです今読んでるとこは。
多分初期の文章より後期の文章は上手になっているんだと思います。読みやすいです。
描写力が連載中に上がってるんじゃないかな
だから最初の方だけで切らないでせめて主人公が能力を活用しだすくらいまでは読んでみることをお勧めします。
結構質は高いと思います。初期以外は。
あと転生前の境遇がなんだか体験してきたかのような描写で「まさか自身の経験じゃないよな…」「こんな目に会った人間がこの文章の向こう側に実在したりしないよな…」とぞわぞわさせられます。まさかね。