類稀な知識量と構成力で生み出された圧倒的ニッチ作品

物語にのめり込むという目的からすればこれ以上ないだろう作品。これを読んでしまったが最後、なろうに存在する他作品で満足など到底できない、圧倒的な世界観の完成度を誇る物語。政治的な話、哲学的な話、宗教的な話、地理的な話、歴史的な話…読者を楽しませる、異世界ならではのそういった話のオンパレードを交えながら、一貫した一人称視点で主人公の大冒険を追体験していくこの描き方は一部の人間の趣向にクリティカルヒットすることだろう。凄まじい熱量で構成された世界は、まるで本当に存在するかのよう。本当に恐れ入る。ここまで物語の完成度に感嘆の息を漏らしたのは、「新世界より」を読んだ時ぶりかもしれない。
ただ、多くの方が言及している通り、読んでいて刺さる人間の方が少ないだろうと予測できてしまうのもまた確か。序盤の取っつきにくさは割愛するが、この作品のユニークな箇所として、主人公を取り巻くリアル感溢れる環境とは裏腹に、能力が非常にゲームらしいチートであるという部分がまず挙げられる。若干そこにちぐはぐな印象を抱いたのだが、この方向性であればステータス画面の様なものを排しても良かったのではと思う。気になった点はそのくらい。そして次にエ口もグ口も包み隠さないというのがシリアス好きにはかなり好印象。あと挙げられるのは、ヒロインの扱い方にクセがあり過ぎるという問題だろうか。主人公が全くがっつかないタイプであることに加え、ヒロインの性格もあり奇妙な関係が永遠に続く点は、フラストレーションが溜まる原因になっているのかもしれない。
そして全体的に描写や設定が細かすぎてライトな層を拒んでいる点。これが結構大きいと感じる。読者によってはメリット・デメリットどちらにも変化する要素であるので、恐らくこれを大きく変えてしまった場合、今度はそれを求めていた我々には刺さらなくなってしまうのだろう。ただ、後から変えるのは無理難題に近いだろうか。

総じて私の様なニッチな層に対しての満足度は非常に高いと推測する。特に人間関係をうまく描ける作家はそれだけで貴重である。だが、一般受けとなると何か他のクリエイターの手によっての二次的な創作等があったりしないと難しそうだ。ポテンシャルは高いので、何か周知する手立てがあれば、と思ってしまうのだが…。
月並みではあるが本当に頑張って欲しい。