エピローグ 

 東屋で暮らしはじめて2週間。

 アラスタが運び込む木の実は多様であるが、何もかもとはいわないがほとんどが、小精霊の作る商品を元手にして入手されたものであるので良く考えねばならぬ。

 林檎、ナッツ、オレンジ、ベリー。やはり美味しいのは美味しい。

 パンの原料となる小麦は、木の実ではないと知っている。正確に言うと、ベリーも違うか。

 魚は島と同じかと思っていたのは間違いだった、見たことないのが沢山いる。

 用心深く毒を避けるのは、必要ないと気づいてとっくに止めた。

 小屋があるのと反対側の空き地にレンガで作ったかまどでアラスタが調理をしているのを観察しながら、膝に乗せた妖精王カトドの柔らかな腹を撫でている。


 ごっこではない婚約は継続している。 

 

 昼食を済ませた午後。

 ピピは急に思い出した。


欄干パラペットから落ちかけた時、何か言ってたよね」


 時が来た――

 という感じでかまどから歩いてくるアラスタ。

 東屋の床はずいぶんと高く作られているので、彼はピピの顔を見上げる。

 湖の瞳はまたたきもせずにこちらを見つめている。

 王国中の空気エアーを吸い込みそうな勢いで上半身を大きく膨らませて。


「ヴぁるぅ! ヴァルルうぅ!」


 彼は言った――

  


 ピピは意味が分かるような気がした――

 



(第一部 了)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妖精姫のお喋りに会話機はいらない~婚約ごっこはティーガーデンの東屋で~ 尚乃 @green_wood

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ