あなたは今、幸せかい

狐狼

第1話『初めに』

 十代の頃――それは人生で最も輝かしい時だと人は言う。

 恋愛とか友情とか部活とか。そういった青春時代に味わう何かしらの時がキラキラしていたと人は言う。

 しかし、私の十代の頃に、そのような輝かしさも煌めきもない。

 あるのはただ漆黒の闇だけだ。俗に言う黒歴史ではないが、私にとっての十代はただ闇雲に包まれていた。

 いや、少しは輝かしさも煌めきもあったかもしれない。

 でも、私は十代の頃に戻りたいとは思わない。あの頃が良かったなんて一つも思ってない。

 私が輝いているのは、今だ。

 十代、二十代に人と違った経験を経て、そして三十代になった今。私は少なからず今までの半生よりも一番輝いている。

 別にこれは僻みでもなければ、嘘でもない。私は今までのどの場面よりも今が盛大に輝いていると思うのだ。

 それはきっと、私が過去より未来に生きているからなのかもしれない。いつまでも過去ばかり見ていられない。そう気づいたのは十代の時だ。

 今も大切だけれど、未来をもっと生きなければと考えたのは二十代。今を精一杯生きようと思ったのが二十代後半。

 そして、三十代。

 私は、子供染みた自分と少しだけ別れようと思いこの物語を綴っている。

 僭越ながら、この本は私の人生史だ。別に面白みはないかもしれない。楽しいというより悲しいとか怒りとかを覚えるかもしれない。もしかしたら、呆れられるかもしれない。

 それでも、私は人生の節目に、岐路に立っている今現在だからこそこの物語を書こうと思ったのだ。

 ただ一つ皆様にお約束出来るのは、これは私の人生と価値観の話であり、他の書籍では味わえない言葉や知識を共有するという事だけは言える。

 それがどんな感情を伴うのかは、この物語を読んだ皆様自身の価値観や人生観に比例するのだとも言える。

 よって、この物語は輝かしさもなければ煌めきもなく、かといって漆黒の闇だけが広がるものでもない。

 そう、この物語は私の人生でありながら、皆様にも起きたかもしれない人生の物語だ。

 心の準備が出来たら、どうか次のページを捲ってください。

 誰にもない、瓜二つと存在しない、人生の物語の幕開けです。

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