第4話『保育園の頃』
私は今の実家に住むまでに、保育園の頃までに三度程転園しているらしい。三歳の頃までに二回、今の近所にある保育園に一回の計三回だ。
今住んでいる市の保育園に落ち着いたのは、母が未亡人になってからだ。
当時のニュータウンと呼ばれる所に母が引っ越してから、私はほとんどそこを拠点に今に至る。
有名なジブリの狸が出てくる市だ。あとは、ジブリの舞台になった聖蹟がある場所でもある。今はその当時より発展していて、狸を見る事は少ないが、鳩や烏などがやたらいる場所なので、山なのは確かだ。
そこの保育園に移ってからの記憶は私にはあるが、それ以前の記憶は幼過ぎて皆無だ。
NB先生が優しくて穏やかで好きだった事。キリスト教系列の保育園でクリスマスは豪華だった事。好きな男の子が居た事。描いた絵が表彰された事などなど。
覚えている記憶はここからになる。
その手始めに、NB先生の事を話そうと思う。
NB先生は女性の先生で、私はNB先生にかなり甘えていた。優しいお母さんのような先生だったのは記憶から言って間違いがない。
一番の記憶は、雷雨になった時がおやつの時間で、その際に私は身動きできなくなった。その際に、NB先生が私の耳を両手で抑えてくれて何とかおやつを食べきれたという記憶だ。
私は今も昔も聴力が発達しているらしく、ほとんどの音が人よりよく聞こえてしまう点がある。静かな電車なら隣の車両の音が聞こえたり、同じ車両で誰が何を話しているのか聞こえたり、家の中に居ても外の音がよく聞こえるくらいだ。
だからこそ、花火大会や雷は特段苦手で、行ったり聞こえたりするだけで気が滅入りそうになる。そんな私の特性を知ってくれていたのもNB先生だ。
NB先生には雷の件や、風邪などで休む事でよくお世話になった。
NB先生からの連絡帳や母の話では、私は月に二回は必ず風邪でお休みしていた程だ。そんな私を気に掛けてくれて、何かあったらすぐ母に連絡してくれていたのもNB先生だ。
卒園式の時には、「素直で優しいままでいてね」と言ってくれたのを覚えている。そんなNB先生の事が私は大好きだった。NB先生のような人に成りたいと思った事も覚えている。
それくらい好きだった先生とお別れする事は辛かったようで、卒園式でも泣いていた私だ。
続いて、クリスマスの事だが、キリスト教の教会がある保育園で、そこでロウソクを持ち供えていたのを覚えている。また、クリスマスの日に劇をやったのも覚えている。イエス・キリストの生誕祭をやっていたのだが、残念ながら私はキリスト教の信者ではない。
それでも豪華な食事やおやつが出ていたのは良い思い出と言える。何よりも覚えているのは、園庭に巨大なクリスマスツリーが飾られていた事だ。数メートルはある巨大なツリーは今も現存しているらしく、子供心に残る思い出の一つだ。
私はそこに何を間違ったのか、クリスマスツリーにお祈りしたのも覚えている。
いつか本当の女の子になって、NB先生や母のようなお母さんになれますように、と。
次に、好きな男の子が居た事についてだが、その子とはいつも遊ぶ中で、私も実際好意を抱いていた。優しくて穏やかな男の子だったが、その子とは小学校に入学する際にお別れする事になった。
最後に、描いた絵が表彰された事についてだが、子供の絵で表彰されただけであって、今の私は絵を描く事が苦手だ。図形などは描けるが、絵心に関しては全くない。どうやら成長の過程で落っことしてきたようなのだ。
それでも描いた絵は園内に飾られ、市の商業施設に飾られてもいた。それで表彰状を貰う事もしたらしいが、私の記憶には描いた絵をNB先生達や母に褒められた程度にしか残っていない。
残念ながら、子供の頃の記憶とはその程度のものなのだと思う。
それでも私の記憶の中で保育園が嫌だった記憶はない。強いて言うなら、母に怒られて押し入れに閉じ込められた事を除けば。
母と何を喧嘩したのかは覚えていないが、それでも私は押し入れに閉じ込められてしまった。今なら何て事を、となりそうだが、当時はそういうのはよくあった話なのだ。
押し入れの中で泣き叫んで、泣き止んだ頃に母が出してくれたのだが、なんとなーくそういう記憶があるだけで、暗闇が怖いとかそういったトラウマに繋がっていないのは幸いなのだろう。
それからクリスマスと言えば、卒園間近のクリスマスに母が当時流行りの任天堂の64を買ってツリーの下に置いておいてくれたのは良い思い出だ。
ソフトはポケモンのゲームとスーパーマリオだった。ゲームを始める子供向けのゲームというのも嬉しかったし、何よりゲームを買ってくれた事が嬉しかった。
その後、私がゲームを趣味にし、没頭する期間があったのは言うまでもないが、それでもこの時の初めての経験は良い思い出だ。
そうして私は小学校に入学する事になるのだが、小学校時代、その幕開けは波乱に満ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます