第10話『登校拒否』

 いじめの決定的な出来事があったその翌日から、私は登校拒否をした。

 学校に行きたくない。あんな場所、あんな奴らに会いたくないと、登校を拒否し続けた。

 最初は母にも怒られたり、宥められたりした。

 なんで行かないの。一緒に行ってあげるから行こう。今日だけは行こうよ。今日から行ってみよう。

 そんな風に言われたが、私は断固拒否した。

 何度も理由を尋ねられたが、本当の事は言わずのらりくらり、時には黙り込んだり布団の中へ逃げ込んだりして回避した。

 それが小学四年生の夏まで続いたのだが、その頃には母の方が先に折れていた。姉にはクラスメイトのお姉ちゃんに言っちゃうよと言われたが、言えばいいと思った。

 そんな風にして私は不登校児になる。

 ゲームをしたり、テレビを見たり、レゴやカードゲームで遊んでいたが、その最中も頭と心は大忙しだった。

 今日は何と言われるのだろう。本当の事を言った方が良いのだろうか。でもそれで新たな問題になったら困る。

 私はダメな子なのかな。ちゃんと学校行けない悪い子なのかな。叱られてばかり、怒られてばかりの子だったんだ。

 でも、あれはもうどうにもできない。自分の力だけでなんとか出来る事じゃない。

 また行ったら殴られて、蹴られて、暴言を吐かれて、私自身を否定させられる。

 そんな事が常にグルグル渦巻いていて、次第に眠れなくなり昼夜逆転した。

 昼夜逆転してからも、私の行動も思考も変わらず、最終的に家の中に居る事が当たり前になった。出かける頻度も少なくなった。

 街中で同級生達に会いたくなかったためだ。

 家と学校が近所のため、外を見れば登下校する子達が見える。遊びに行く子達も見える。家族で出かける子も見える。

 それが私の次の苦痛だった。

 なんであの子達は外に居て、私は中に居るんだろう。なんで楽しそうなんだろう。なぜ私は楽しくないのだろう。

 どこか遠くに行きたい。誰も知らない土地に行きたい。そこでまた新しく生活を始めたい。でも、母と姉に迷惑を掛ける。

 やっぱり私は――不良品なのかな。

 そう思うようになって、それが頭の中を巡って昼夜逆転し、小学五年生になる十一歳の頃。

 私は、自殺を企てる。

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