第11話

ひとつは、黒川さんがそうだという不幸体質に対する聞き覚え。

ひとつは、今どこで何をしているのか分からない黒川さんのこと。


どちらも、数日経った今でも進捗はない。


「んー…んん~??」


休日。僕は外を歩きながら考え込んでいた。家の部屋では、閉鎖的で集中できなかったのだ。……それに、外でいればリヴィにも会えるかな、なんて。


目的地は僕が缶を放り捨ててしまった小道。中身がある缶ジュースを放置したままだったことに気が付いて、回収しに行っている最中である。ポイ捨てをしてしまったことには限りないし、思い出した以上そのままにしておくわけにはいかない。


「ここだったよね」


記憶を頼りに、僕が缶を放り投げた小道を覗き込む。


「……あ」


砂利の上に転がる紫の缶。それに影を落とす、魔法少女。


「…り、リヴィ」


ゆら、と缶を見つめていた魔法少女が僕を見る。フードの暗闇で光る、ピンクの双眸。


「……少しだけ、お久しぶりかしら、ユオ」


あの夕暮れ時の公園ではしゃいだ声をあげていた無邪気な魔法少女の面影はない。出会った当初の、無機質ながらに強い意志を秘めた瞳だけがそのままだ。リヴィがそっと缶を拾う。


「これ、アナタのでしょう。ポイ捨てはダメかしら」


リヴィは魔法少女だから。それでこの缶を捨てたのが僕だって分かったのかな。首を傾げながら缶を受け取り、持っていていたビニール袋に入れる。


「その…久しぶり、リヴィ」


ひゅ、と魔法ステッキが喉元に突き付けられた。え??


「リヴィは人を傷つけるためには魔法を使わない。でも例外は別。人を傷つける人には容赦しない。だからリヴィの問いに答えなさい」


リヴィが感情を抑え込んだような、不自然に静かな声で僕を問う。宝石のようなピンクが鮮烈な煌めきで僕を縫い付ける。


「『不幸体質』の黒川零。彼女に対して、アナタはどう思ったのかしら」


僕に突き付けられるステッキは、何故か震えている。

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