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PM 9:00 探偵事務所 如月


 愚者グール死体したい解剖かいぼうはじめてから数時間すうじかんった。この数時間だけで、いくつかの結果けっかてきた。

 まず始めに、セシリアがってきた個体こたいは、愚者グールになってからそれほど経過けいかしていないみたいだ。

 何故なぜなら、魔力まりょくそそがれてから半日はんにち程度ていどしかってないからだ。不自然ふしぜんのこ人肌ひとはだが、確固かっこたる証拠しょうこだ。

 また、採血さいけつしたところ、まだドスぐろくなっていない。本来愚者ほんらいグールの血は人間にんげんくらべてくろで、かなりくさい。

 しかし、この愚者グールにおいをぐと、けもののような刺激臭しげきしゅうかんじなかったのだ。


「魔力を注がれたりょうがまだすくない。少量しょうりょうだけで愚者グールになったのか?」


 採血した血から、魔力の量をはかる。測ったところ、少量の魔力を注入ちゅうにゅうされただけで、拒絶反応きょぜつはんのうこされたみたいだ。

 それに、からだをもう一度見いちどみてみると、囚人しゅうじんものおもわしきタグがけられたままになっている。

 これは一体いったい? なにやら、どこかかられてたようだ。


「このタグは、一体? たしか、望月もちづきさんが囚人が消えてるって言ってたような?」


 昼間ひるまに望月さんが、ってたことをおもす。ここ最近さいきんふたつの刑務所けいむしゃで囚人が失踪しっそうしていることを。

 もし、えた囚人がおまじく愚者グールにされていたら? ますますいや予感よかんがする。

 そうなってしまっては、私はかれらをころさざるなくなる。愚者グールにされた人間にんげんなお方法ほうほうはないのだからだ。


「あら? ここにいたなんて。なんだか面倒めんどうなことが起きていたのね」


 足音あしおとこえ、くと彼女かのじょがやってきた。どうやら今回こんかいは、いつもの姿すがたらしい。


「何のよう?」


「あなたにつたえたいことがあって来たわ。っと思ったけど、もうこっちにまでけてたとはね」


「たまたまさ。まさか、奴をってたら、愚者グールと出くわすなんて思ってもないよ」


 彼女は、すで愚者グールについて調しらべたことを私に伝えようとしていたみたいだ。

 しかし、偶然ぐうぜんにも私が調べ始めていることに、残念ざんねんそうに私をつめている。


「なら、はなしはやいわ。遠回とおまわしに伝える手間てまはぶかれて」


 彼女は、単刀直入たんとうちょくにゅうに私にはなしをする。


「奴に、あなたが自身じしんを追ってることを知られたわ。今、始末しまつしに刺客しきゃくかわせてるみたいよ」


「――――――そうらしいな。とおくからでも、魔力を感じる。

 ここで始末しておきたいのだろう」


「あら? 久々ひさびさに見たわ。あなたのそのかおを」


 彼女の話を聞き、殺意さついしになる。今の私は、『探偵たんてい』のかおではなく『魔術師まじゅつし』の顔になってるそうだ。

 それを見ていた彼女は、うっとりとした顔で私をみる。変態へんたいか、こいつは。


「かれこれ、4ねんぶりか。あの老害ろうがいどもを血祭ちまつりにあげた時以来ときいらいだ。ここまでいかりがまったのは」


「4年も安泰あんたいだったから、退屈たいくつでしょうがなかったわ。あなたがつよすぎるのが問題もんだいなんだけど?」


「からかってるの?」


「いいえ。事実じじつみたいなものだけど? まぁ私はたかみの見物けんぶつとさせてもらうわね」


 そういうと、彼女は亜空間あくうかんへとえていった。それと同時どうじに、だれかがけつけるおとこえる。


ねえさん!! 公園こうえんから愚者グールむれてるって!!」


 ラスティアが駆けつけて来た。どうやら、愚者グール反応はんのうかんじ、私に伝えに来たみたいだ。


状況じょうきょうは?」


「セシリアが、迎撃げいげきに行ったよ!! 姉さんも、早く!!」


 私は、工房を後にし愚者グール大群たいぐんむかつために中島公園なかじまこうえんに向かう。

 すると、ラスティアが私の方を見る。


「姉さん。それで行くの? 血がつきまくってるよ」


「他にないでしょ? 早く行かないと来てしまう」


 ラスティアは、すぐに着替きがえを持って行き、私に着させる。

 白のノースリーブのブラウスとジーンズを脱がせ、黒のノースリーブのタートルネックのセーターを着させ、ボトムスには茶色のフレアスカートを着させる。


「これでよし! ここの守備しゅびは私と明日香さんでやるから、姉さんはセシリアと合流を」


「わかった。ここは任せるよ」


 私は、2人に事務所じむしょの守備をまかせ、セシリアのいる中島公園へと向かう。

 指を鳴らし、黒のダウンジャケットから白のロングコートに変え、事務所を後にする。

 かくして、私は独り中島公園に向かった。


 ――――――――――――――――――――


数分後 中島公園


 急ぎで中島公園に着く。入り口には、セシリアが一服いっぷくしながら待っていた。


おそかったじゃない。1人でもいいからやってしまうところだったわ」


「すまない。出ようといたところ、ラスティアに止められてね」


「それは仕方ないわね。なら、始めましょうか」


 セシリアが身構みがまえを始める。


粉砕ふんさいしろ!『ニョルニル』!!」


 彼女がジャンプすると、くつ姿すがたえ、ハンマーのようなハイヒールになる。

 近くまで見ないとわからないが、彼女は少しいている。

 その状態じょうたいから、セシリアはウォーミングアップを始めた。


魔具まぐ解放かいほうしてるとやりずらんじゃなかった?」


仕方しかたないわよ。ながいことこのしょくをしてるとね」


 私は、小杖タクト召喚しょうかんする。そして身をかまえる。

 しばらく待ってると、うめごえともに、愚者グール大群たいぐんあらわれた。


「さて、やるとしますか」


「あぁ。一匹残いっぴきのこらず蹂躙じゅうりんするとしようか」


 愚者グールの大群は呻き声を上げながら、私たちをおそいかかる。

 かくして、私たちは愚者グールの大群を相手あいて戦闘せんとうはじめるのだった。


 

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