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PM 1:10 大通公園


 コンビニにり、コーヒーをっては煙草たばこいながら一服いっぷくをしていた。

 季節きせつはるになっているとはえ、このまちにはまだゆき多少残たしょうのっている。

 そのため大通公園おおどおりこうえんにはまだベンチが設置せっちされていないのだ。仕方しかたなく、わたしさくこしをかけて一服している。

 煙草をえると、よく知る顔馴染かおなじみがちかくまでたようだ。


公園内こうえんない喫煙きつえんしてると、1000えんられるけど?」


明日香あすかか。どうしたの?」


 かみ帽子ぼうしでまとめ、上下じょうげおながらのジャケットとホットパンツを明日香あすかが、むかえに来たみたいだ。


「どうしたのじゃないよ。電話でんわないとおもったら、きみスマホをわすれてっちゃうんだもん。ラスティアが心配しんぱいしていたよ」


 明日香に指摘してきされ、ジャケットのポケットを確認かくにんする。なにかないとおもったが、本当ほんとうにスマホをいて行っていたそうだ。

 どうやら、財布さいふと煙草のみをったままってしまったみたいだ。


「それはすまない。完全かんぜんに置いていったみたいだ」


まったく君は。それより、はやいところもどろう。彼女かのじょはやれてこいってうるさいから」


「わかった。それならいまから行こう」


 私は煙草を殻入がらいれに入れ、明日香ととも地下鉄ちかてつ使つかって事務所じむしょへ戻った。


 ――――――――――――――――――


20分後 探偵事務所 如月


 中島公園なかじまこうえんで地下鉄をおり、すこある事務所じむしょく。けかけているゆき不快感ふかいかんかんじながら到着とうちゃくした。

 くつに付いた雪をとし、事務所のとびらける。扉を開けてはいると、ソファでくつろいでるセシリアと、資料しりょう整理せいりしているラスティアがっていた。


「おかえり。ねえさんってば、スマホを置いて行くから心配したよ」


「すまない。うっかり置いて行ったみたいだ」


「全く。あなたはそううのにうといのはわらないわね。出ないと思って来たらそういうことだもの」


 2人にスマホのことを言われつつ、私と明日香はソファにこしをかける。

 来客用らいきゃくよう消毒用しょうどくようアルコールで殺菌さっきんし、ラスティアのれたコーヒーをむ。

 明日香は、ハンバーガーを亜空間あくうかんからし、それをくちはこぶ。

 コーヒータイムをたしなんでると、セシリアがはなしはじめる。


「ねぇアル。工房こうぼうけてもらえるかしら?」


「いきなりどうした? なに調しらべたいことでも?」


「えぇ。即急そっきゅうで調べたいことあるのよ。昨日きのう、あるものとくわしてね」


「あるもの? それって?」


 セシリアは、しろぬのつつんだものを持ってくる。私はデスクのよこの扉を開ける。

 ゆかきざんだ魔術まじゅつ術式じゅつしきくと、床が消え石造いしづくりの階段かいだんあらわれる。

 しばらくあるいてると、これまた石造りのかべが現れる。私はふたび術式を解くと、石造りの壁が開き、私の工房が現れた。

 ラスティアは、薄暗うすぐら空間くうかんをランタンにをつけてあかりをともす。

 セシリアは白い布で包んでるものをだいせ、私達わたしたちまえで布をほどいた。


「これは、一体……」


 布がほどかれたそれは、あまりにもひどひと姿すがたをしていた。それを見るに、人とはかけはなれた異形いぎょう姿すがたをしている。


愚者グールよ。昨日きのう、ラスティアにホテルまで乗せてもらったかえりに、気配けはいかんじてね。

 いたらこいつと出くわしたわけよ。まぁ、反射的はんしゃてきむね風穴かざあなを開けてしまったけど」


愚者グールか。このまちじゃあまないな」


「ここ最近さいきんかずやしているみたいなの。よるうめごえこえるってうわさひろがってるみたいだし」


「こいつらは基本夜行性きほんやこうせいだしね。夜中よなかに呻き声が聞こえるんじゃそうなる訳だ」


 セシリアの報告ほうこくを聞きながら、からだ一部いちぶれてみる。肌触はだざわりをかんじてると、違和感いわかんを感じた。

 これは、まさか? 人肌ひとはだ感触かんしょくだ。


「まだ人間にんげんだったときはだの感じがする。魔力まりょく無理むりやり注入ちゅうにゅうされたらしい」


「そうね。ころした時におもったけど、がしたわ。愚者グールになりかけてるって感じね」


 まずいことになった。どうやら、私の知らないところで、奴は力をたくわえてるみたいだ。

 さっきの学生達がくせいたちといい、奴はなにかんがえているのか?

 ますますなぞふかまる。魔術と目的もくてきはわかった。しかし、当人とうにん所在しょざいと人のあつかた疑問ぎもんしょうじる。

 こんな遠回とおまわしな事をせずとも、容易たやすく人なんて集められるのに、奴はなぜこうもまわりくどいことをしているのか。


「そういえば、警察署けいさつしょからなに収穫しゅうかくはあったの?」


 ラスティアが、あさのことをかれる。私は、かばんを開け封筒ふうとうを取り出す。

 封筒の中身を出すと、あの遺体いたいからコピーしてきた烙印らくいんみんなに見せる。


「これは? 何かの術式じゅつしきかしら?」


警察けいさつ保管ほかんしてる遺体からうつしてきた烙印さ。4たいの遺体のうつ、2体にきざまれてたそうだ」


「それじゃ、亡くなられた人はこれを刻まれて、間接的かんせつてきに殺されたの?」


おそらくね。ただ、何を媒体ばいたいに集められているのかは分からないだけさ」


 私たちは推理すいりしていると、明日香はスマホの画面がめんを私たちに見せてきた。


「これじゃないかな? SNSを媒体にしているなら、そうするはず」


「SNSを媒体? そんな事できるはず……まさかね」


 セシリアは、何かをひらいた。どうやら、なにつながりのあることを思い出したそうだ。


「犯人がこれで人集めをしてるなら、ピンとくるわ! 他の二つに事件も共通きょうつうしているなら!」


「SNSを媒体に人集めをしているなら、それならうごかずとも人を集められるな。信憑性しんぴょうせいうすれるネットなら、何かを口実こうじつ簡単かんたんに集めれる。

 そして、それをえさに自分の魔術の実験じっけん利用りようできるっか。これはまた面倒めんどうな事になりそうだ」


最近さいきんれい感染症かんせんしょう蔓延まんえんで、自粛じしゅくされて学校がっこうかよえない人たちが沢山たくさんいるから尚更なおさら被害ひがいえる一方いっぽうだよ」


 全員ぜんいんで、奴からの被害をらすすべ模索もさくする。考え事をしていると、だれかのはらおとが聞こえる。


「あっ。ごめん、おなかすいちゃった」


「もう、明日香さんったら。そう言えば、もうこんな時間。今からご飯作りますね」


「私もご馳走ちそうになってもいいかしら?」


「もちろん。姉さんのわりに用意よういするね」


 3人は、食事しょくじのため。工房をあとにする。私はうしろから3人を見送みおくる。

 こうして、私は1人淡々たんたん愚者グールの死体から触媒しょくばい採取さいしゅはじめるのだった。 


  

  

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