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AM 10:20 探偵事務所 如月


 五十嵐いがらしさんのむかえのくるまを待ちつつ、あれからもらったタブレットをながめている。

 予定よていでは、10に迎えに手筈てはずだったがいまだにない。おそらく、なにきたのだろう。

 ラスティアがれたコーヒーをみ、タブレットに保存ほぞんされている動画どうが再生さいせいする。

 再生されている映像えいぞうは、あまりにも凄惨せいさんなものだった。

 なんと、4にんの10だい男女だんじょ全裸ぜんらくらいところにて、そのうちの2人が2ほうからだ刃物はものし、はらひらかせて臓器ぞうき放出ほうしゅつさせてころさせたのだ。

 そして、殺した方の2人もまた、くびを刃物でっては多量たりょうを出してそのままことえた。


「これは流石さすがにやってるな。ここまでするとは余程自分よほどじぶん技術ぎじゅつ過信かしんしているらしい」


 私はその動画を、何度なんど見返みかえす。よくると、殺した方の2人の目には

 ズームしてみると、画質がしつあらいせいか、胸元むなもとに何かのあざがあった。

 やはりこれは、被害者ひがいしゃ遺体いたい調しらべるほかにない。ハイテクになっていく現代げんだいでも、実物じつぶつをみる方が手っ取り早いのはいつの時代じだいも変わらないのだから。

 そう考え事をしていると、ラスティアが事務所じむしょに入ってきた。


「姉さん。道警どうけいの人が来たよ」


「わかった。すぐ行くよ」


 どうやら、五十嵐さんがようやく来たみたいだ。私は支度したくませ、事務所を後にする。

 玄関を出ると、黒いプリウスが止まっていた。


「悪りぃな、おじょうさん。野暮用やぼよう出来できちまっておくちまって」


「いえ、いつ来るのかと暇を持て余した所ですよ」


 五十嵐さんは助手席じょしゅせき荷物にもつを後ろに置くと、私に乗るよう促す。

 私は五十嵐さんの車に乗り、警察署けいさつしょに向かった。


 ――――――――――――――――――――


数分後 北海道警察 中央警察署


 五十嵐さんの車で警察署に着く。ここからは中島公園なかじまこうえんまでは、それなりにれてるので地下鉄ちかてつとチカホを使えば行けない事はない。

 まぁ、誠意せいいなら受け入れるのが礼儀れいぎと言うものだろうか。

 警察署に着くと、五十嵐さんに案内あんないされた部屋へやで待つことになる。


「ここで少し待っててくれ。それと、望月もちづき事件じけん資料しりょうを持って来させるわ」


 五十嵐さんはそう言うと、ここを後にする。私は、用意よういされたコーヒーを飲みながら待つ事にした。

 しばらく待っていると、ドアが開き望月さんが来た。塞がれている手には、事件の進歩をまとめたファイルがあった。


「すいません、キサラギさん。五十嵐さんの無茶振むちゃぶりを聞き入れてくれて」


提案ていあんしたのは私ですので、お構いなく。それより、そのファイルは?」


 望月さんは、両手いっぱいの資料しりょうをテーブルに置く。ページいっぱいにまでに挟んでるためか、相当重そうとうおもいのだろう。

 

「五十嵐さんに持っていけって言われて持ってきたやつです。あの人、本当に人使ひとづかいがあらいんですよ」


 苦笑にがわらいしながら、私はファイルを開く。中身なかみを見ると、これまでの経緯けいいめられていた。

 被害者ひがいしゃくなるまでの経緯と、亡くなる前の心境しんきょうまでをしるされている。

 まさか、ここまでの事件じけんのことを記録きろくしていたとは|おどろいた。ここまで精密せいみつに記録するなんて、思ってもなかったからだ。

 そう感じながらページをめくってると、新しいページを開く。ペンの具合的ぐあいてきに、これが最新さいしんのものになるだろう。


「これは、また被害者が?」


「えぇ。通報つうほうした方によると、発見はっけんした場所ばしょひど状態じょうたいだったそうです。

 全裸の10代の男女4人組が2人ずつ外傷がいしょうは違えど、全員出血性ぜんいんしゅっけつせいショックで亡くなったそうです。鑑識かんしきによると、殺害後さつがいご自殺じさつしたそうですし」


「4人共死因が出血性ショックで、その内2人はもう2人を殺害後に自殺したと」


 やはりそうか。あの映像は、この事件のそれも最近亡くなった4人のものだったのか。

 そうなると、少し気がかりなことがある。奴は、何の為に遠回とおまわしなことをやっているのか。

 眼鏡越めがねごしの吸血鬼きゅうけつきのような瞳孔どうこうをファイルに向けながら、考える。

 望月さんは、何かを心配しんぱいしているかのように私に話しかける。


「い、如何いかがなさいましたか?何か、ご不明点ふめいてんでも?」


「いえ、何でも。それより、コーヒーのおかわりをもらえたりしますか?」


「は、はい!今持ってきますね!」


 望月さんは、私のカップを持っていき部屋を後にする。何かと、あわただしい人だ。

 私は、ファイルを閉ざすと、虚空きょくうに向けて話しかける。


「あのタブレットの中身、見たよ。まさか、このようなことになってるとはね」


「あら、それはどうも。野良猫のらねこまぎれて撮ってきた甲斐かいがあったわ」


 亜空間あくうかんから、彼女かのじょがやってきた。どうやら、女子高生じょしこうせい格好かっこうできたらしい。


「なんだ、まだそれ捨ててないんだ」


「ここで、一番馴染いちばんなじんでるんですもの。そう易々やすやすきないわ」


「そう。それより、ご遺体はどうなってる?」


警察連中けいさつれんちゅうの所にあるわ。何なら、ここだと思うけど?」


「君にしては随分ずいぶんと投げやりじゃないか。目当てのがあったの?」


「さぁ?少なくともそれはないわ。まぁ、それは後になってからの話だろうけど」


 2人で話していると、誰かの足音あしおとが聞こえる。おそらく、五十嵐さんのものだろう。


「そう言うことで、また何かあったら伝えるわ。アル」


「はいはい。期待きたいはしないけど、また頼むよ」


 彼女は、笑顔を見せながら、亜空間に入っていく。亜空間が消えて少しして、ドアが開いた。


「すまんな。鑑識に頼み込むのに、時間食じかんくっちまって」


「いえ、待っている間、資料を拝見はいけんさせていただいたので」


「そうか。それより、遺体安置室いたいあんちしつの用意ができた。すぐに向かうがいいか?」


「はい、大丈夫です」


 私は、そう返答すると、五十嵐さんは私を遺体が保管ほかんされてる場所に案内する。

 そして、荷物にもつを持ち、私は五十嵐さんの後を追うのだった。  

 

 

 

  

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