この一杯の中に現在進行形の家族の肖像が見えてくる

夜中に兄と一緒にラーメンを作るというシンプルなお話なのに、そこから家族の関係や過去の出来事、それぞれの生き方へと深みを増してゆく。豚骨のスープではありませんが、非常に味わいのある物語です。
言いたいことを声高に叫ぶのではなく、じわりと読者に感じさせる語りで、葛藤を抱えながらも一生懸命に生きる姿が繊細に描き出されています。
この家族はここで止まるわけではなく、まだまだ変わり続ける現在進行形なのだろうと思いました。思わず真似したくなるトマトと卵のラーメン、この一杯の中にたっぷりの優しさとひそかな希望が見えました。心まであたたまる一篇です。

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