精緻な自然への視点

 この世界では月が三つあり、それぞれが決まった間隔で動いているという異世界の話のようです。この世界には物理学があり、科学者もいるようで、天動説ではなく地動説が選ばれています。また霊山にとても大きな振り子が存在しています。そこで学徒であるフラートがいま立っている星は教えられている通り、丸いのかを一生懸命理解しようとします。このようなあらすじを持つ本作はれっきとした科学小説のようです。

 物理学の本質というものは、なかなか「いま・ここ」にいるだけでは理解しづらいもののようです。飛行機で南半球に行ったり、宇宙へ行ったりした人が突然すべてを理解した! と思うようなことだとどこかのエッセイで読んだ記憶があります。

 そうした瞬間を切り取った作品だと読みました。エンタメとはほど遠い本作ですが、自然と科学的真理が身近に感じられる作品だと思います。