<第5ラウンド> ベイトⅡ
正面の敵が俺の存在に気づいた。俺はとっさに身構える。
「正面のやつに気づかれた、敵の射程圏内に入ったら撃たれる。ツキやんは一対一中だから…」
「崖のやつな。」
ふっと笑って見せるちっちにあぁ、お前はそうゆう奴だと思った。
俺は前の敵から離れるため後退りする。
崖の敵の射撃を受けたら面倒だったため、茂みに隠れた。だが、ちっちやツキやんに標的が変わってしまったら更に面倒だ。前の敵を倒すしかない。
ヤツに狙いを定める。一発命中、相手のライフが2になる。シューターは3発命中させなければいけない。一方のチャージャーは一発でライフを0にできる。今回は良いことに、お互い初心者の身であるからに相手も射撃に慣れていない。けたたましく動けば、命中させられる可能性も少なそうだ。もう一回撃つ、甘い。息をつく間もなく相手からも攻撃がくる。撃てば撃つほど相手の射撃も正確になってくる。俺もうまく避けつつ攻撃を続け、もう一本命中させた。ライフは1対3で俺のほうが本当は上なのにやっと対等になれたような気持ちになり安心する。絶え間なくもう一撃、相手も動きが精密に機敏に動くようになってきた。
俺は相手の動きを鈍くさせるため攻撃を続ける。もう少し近づけば当たりそうだと思い茂みから思いきり体を出す。
ーそれが間違いだった。相手の銃口がこちらを正確に見つめている。やられる、本能でそう思った。やばい、しぬ…
ドンッッ。
大きい鉛の球が空の上から落ちてきたような一瞬の出来事だった。表現するとすれば、運動会のよーいドンの鉄砲を顔回りで10台一斉に放ったような、いやそれ以上なとんでもない音を発する。
「ドグやるじゃん。」ちっちの声だ。
「ダメージ0で相手のライフを2も減らすなんて。」ちっちの温かさと爽やかさと強さと信頼感etc…に惚れてしまいそうになりながら(いやもう好きになった)俺らはツキやんのもとへ向かう。ちっちのほうが近かったため、俺より先に着いた。
「おう、終わったか?」
なんだぁ?この余裕の表情、むかつくなぁ。
こいつらがいれば最強だな、余裕でゲームマスターの座を奪えそうだな。なんて安心してしまう。
『ナイスゲーム!!!』
…あれ?俺このゲームでなにが出来た?俺は目の前の敵に二発命中させただけで、別にちっちが撃てば一発でやっつけられたじゃんか。俺は何もやっつけてないし、囮にも大してなれなかった。
ー俺、要るのかな。
「ドグ、ナイスゲーム!お前が目の前のやつの目惹いてくれたから、俺らは思う存分目の前の敵と戦えた。お前は立派な囮、いや素晴らしいシューターの使い手だ。」
ツキやんの言葉にちっちも頷く。
「ナイスゲーム!」
ニカっと笑ってもう一度俺は言う。ー泣きそうになんて、なっていない。
肘をぶつける。三人の肘が、掴み取ったその腕で
勝利の音を鳴らす。
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