激弱な俺だけど、チャージャーだけの世界に転生したら最強になった話

梓ゆみ檀ゆみ

<第1ラウンド> デスルーラ

ゲームの上手い新井 満、何でも器用にこなす千賀 力。そして俺、平石 健。俺の特徴なんぞ特にない。強いて言うなら激弱ゲーマーだろうか。


俺ら3人は気の置けない仲「だった」。深いつながりがある訳でもない、ただそこに俺らがいるから俺らというコミュニティが存在する。それだけだ。

最近の俺らはゲーマーの間で密かな人気を得ているゲーム「シュッターバン」(略してシュタバン)に夢中「だった」。


【ギルドメンバー】

・平石 健 ーKen Hirai (ハンドルネーム:ドグ 健(けん)→犬からドッグにしようと思ったが、長かったので小さいツをとったもので力がつけた。なんて適当な名前なのだと思ったが、今はなんだかんだ気に入っている。)

・新井 満 ーMitsuru Arai (ハンドルネーム:ツキやん 名前の最後と最初に月をつけると満月、新月になることから俺と力がつけた)

・千賀 力 ーChikara Chiga (ハンドルネーム:ちっち 苗字の最初も名前の最初も「ち」で始まることと、言いやすいように間に小さいつを入れたもので満がつけた)



俺らの平凡な日々は、あの新月の日に崩れ落ちた。


ツキやんの死。

生まれつき心臓が弱かったのが、高校二年になってから急に悪化した。俺とちっちはなんども見舞いに行った。そのときにはもう俺らは、ただのコミュニティーやゲーム仲間ではなく《親友》になっていたのだと思う。それが入院して2か月後、新月の前日。あいつは本当に病気なのかと思うほど元気そうで、辛さを感じさせなかった。今考えたらあいつは俺らに心配かけさせたくなかったのだろう。

「明日は新月なんだって。」

「ふーん、じゃあツキやんの日だ。」俺はニカッと笑って言った。

あいつは少し驚いた顔をして、見えない月の方向を見てそれから少し笑って

「そうだな。」と言った。


そして次の日、あいつは俺らが学校に行っている間に息を引き取った。17歳という若さで。


俺は学校に行く気にならなかった。ゲームなんてもっての外、ツキやんの死後俺は死んだように生きていた。学校には行きなさいと母に怒られてしまい、透明人間のような生活を送ることとなった。

いや、俺だけではない。ちっちも俺と同様だった。ツキやんの死は段々と風化した。いや、暗い話から目をそらしたいという人間心理だろうか、他の生徒はツキやんの死を風化させたのだ。ちっちと俺はもう何も考えなかった。ただ昼休みになったら机をくっつけて無言で昼飯を食べるのであった。そこに言葉はいらなかったのである。


一か月ほどの月日が経ち、ツキやんのいない世界は太陽のでない朝のようにそれが当たり前と化し、それでいて完全に慣れることはできないままだった。


ちっちの家に借りていた漫画を返しに行こうとした日。眩しい太陽の下を歩く気になれず、19:00頃ちっちの家まで歩いた。あの日以来、月を見ると胸が痛むため俯いてぼーっとしながら頬をなでる冷たい風に心地よさを感じていた。

急に光が眩しくなって目を細めて前を見ようとした途端、痛みを感じた。もー痛ってぇな、なんだよ。


フワッという感覚。いつの日か遊園地のジェットコースターで感じた、いやそれよりも心地良い感覚。


何が起きたのかすぐには分からなった。ただ一つ分かったことは、その刹那に俺は



ー死んだんだ。

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