<第11ラウンド> ルーザー

ーうっすらと目を開ける。そっと閉じる。

聖母に包まれているかのような温かみと幸福感に、目標である”かっこいい大人”からは遠く離れた、あのあどけない笑顔を振りまいていた幼少期と今を重ねる。

満足感に重力さえもふんわりと包み込んで、俺は地球にもたれかかるような感覚を覚えて心地よい。


「ぐ…どぅ…ドグ!!」

はっと目を覚ます。俺は撃たれて死んで…あれ?もう既に一回死んでるから…えっと、ここは天国…?

「ドグ、俺に感謝しなさーい?」ツキやんが満面の笑みを浮かべて俺に言う。

「ツキやんの能力が《ライフ回復》で良かったなー。命の恩人に感謝せいっ!ってな。」ちっちが珍しくハイテンションで言う。俺はまだだるい体にまとわりつく重力に逆らって上半身だけ起こす。右足の太もものあたりが全体的に痛く、裏側は感覚すらなかった。

「勝敗は?」一番気になっていたが、躊躇いなく聞いた直後になって察した。


俺は太ももに一撃をくらった。そこでツキやんの能力が発動して俺は死んでいなかったが、あまりの痛さに気絶していたらしく、相手も仕留めそこなったとは思ってもみず、俺は幸運なことに生きているというのが今の俺の現状だ。俺を撃った奴をちっちがほぼ同じタイミングで撃ったが、ちっちをもう一人のやつが撃って左腕を負傷。ツキやんはパニックになってしまい、右腕を撃たれ負傷。幸運なことに二人とも利き手ではなく、軽傷で済んだのだという。

俺的に圧倒的不利な状況での3対2での敗北なのだから歯ぎしりするほど悔しくはないが、ちっちやツキやんは自分の無力さに苛まれて少し落ち込んでみえる。

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激弱な俺だけど、チャージャーだけの世界に転生したら最強になった話 梓ゆみ檀ゆみ @akechi_kogoro

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