<第3ラウンド> バフ
ちっちは寛大なヤツだ。俺はちっちのそういうとこが好きだからつるんでるんだ。自分が嫌な奴と一緒にいるのを我慢するほど俺は心が広くない。
俺らがちっちを殺したということを遠回しに伝えても、少し驚いてそれから二度頷いて
「まあ、また会えてうれしいよ。ドグも逝っちまっちゃあ俺も居場所がなかったから。」と言ってくれた。へらっと笑って見せたちっちの顔から奥深くに刻まれた悲しみ、苦しみが垣間見えた気がしてドキッとする。どんなに寂しかったか、ツキやんの死後を経験しているからよくわかる。いや、それ以上だったろう。
【やァ。初めましてカナ、青二才ども。】
俺らはどこからか聞こえる声にハッと耳を澄ます。
【某はゲームマスター兼最強だ。某の跡取りを決めるため、お前らには新しい最強にナるべく戦ってもらウ。】
これ本当にシュタバンなのか?ゲームマスターなんかいたっけ??
【最強になった者には報酬モ用意している。また新たに人間として生まれ変わらせる。まァ言うなればクイズ大会の賞金のハワイ旅行みたいなモンだな。そして死んだら最強になった記憶を戻してゲームマスターの職を全うしてもらう。】
また…人間に生まれ変われる??俺の心が歓喜に騒ぐ。最強になれば前世でやり残したことをできるチャンスなんじゃないか?
俺は生まれ変わる、絶対に。激弱ゲーマー根暗からキラキラライフを送りたい!なんてちっぽけな夢かもしれない。それでも誰しもが一度は夢見た"かっこいい大人"という存在になってみたい。
しかしそれは誰しもが思っていたことであったろう。その証拠に、ツキやんもちっちも恍惚として聞き入っていたからである。まぁそりゃあそうだよな、だれだって死に物狂いで生を求めるんだ。たとえそこに友人があっても。
【お前らビギナーの周りにはオナジくビギナー多数のギルドを設置した。まずはそやつらと戦って鍛錬をつんでもらう。】
「なんかゲームだとなんも思わなかったけど、実際中の人としてやるとなんか怖いな。」ツキやんの言葉に俺も同感だった。
【アっ、忘れてた。平石 健、お前は異質だ。良い意味でも悪い意味でも、お前だけはチャージャーを使いこなせないという結果が出た。お前だけがこの世界でシューター使いだ。まぁ、せいぜい撃ち抜かれナ。】
!?俺だけシューター!?前世でもシューター使いは見たことがなかった。なぜならチャージャーは直撃だと一発で倒せるし、なにより遠方からの攻撃に向いている。所謂”決め打ち”に強いのだ。それに対してシューターは近くからの攻撃に勝る。一度気づかれたら終わり、その間にチャージャーに撃ち抜かれるのだからシューターの使い手はいない。
「ドグ!お前…」
「俺らもチャージャーだぜ、シューターて…」
ツキやんとちっちの恍惚とした顔は絶望へと変わり、俺もこりゃあ大変なことになったと思った。
ー本当に、大変なことになってしまった。。
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