<第6ラウンド> ハンティング
「腹減ったぁ~。」
ツキやんの言葉に俺も空腹だったのを思い出す。異世界でも腹は減るし、眠くはなるし、虫には刺されるし…前世と変わらない。こちらの方が物騒なのだから、そういうことは考慮してほしいなんていう文句も言っていられない。
「この前戦ったギルドからは何かアイテムもらったのか?」勝負に勝った方のギルドは負けた方のギルドから食料や回復、強化のアイテムなどを得られることになっている。つまりこの場合、「何かアイテムもらったのか?」ではなく「何かアイテム奪ったのか?」というのが正しい…気がする。そしてそのアイテムの管理はギルドマスターが行うことになっている。俺らのギルマスはツキやんであり、前世はさり気なく忘れ物常習犯であったから失くさないかどうか不安だが…。
「あぁ、回復アイテムの薬草とウサギが一羽だけ。薬草は傷口に当てると瞬時に治るらしい。さらに枯れるまで使えて枯れるのが約一年という優れもの。ウサギは前世の影響から食べるのに躊躇するやつもいるかもだけど実は美味。ただ腹にたまりにくいのが難点らしい。」
「やけに詳しいじゃん。どこの情報よ。」
「ギルドマスターのためのガイドブック。」
『なにそれ!?』…いつの間にもらったんだ?というかどうするよこのウサギ?美味?流石に食べれないだろ…。
「お前ライフ回復能力使えるじゃんか。それでこのウサギ生き返らせてあげられないのか?」
「残念ながら、ライフ回復能力はバトル中しか使えないし人間にしか使えない能力なんだとよ。それもココに書いてあった。」ツキやんがひらひらとガイドブックを揺する。
「じゃあ腹も減ってるし…食うしかないんじゃないか?」
たしかにそうかもしれないけれど…。
「おーい!そこの若い兄ちゃんたちよぉー!そのウサギちょいと見せてくんねぇか?」遠くからしわがれた声のおじいさんの声がする。テントでバザーでも開いているようだ。明らかに怪しそうだが、ウサギを食べるのはさすがに気が引けたのでちょうどよかったと思って俺らはすぐにテントの方へ向かった。
「おぉーこれは素晴らしい。よしっ、良い値をつけてやろう。20ベルナでどうじゃ?」
20ベルナ?なんじゃそれ。まぁとりあえず良かったんじゃあないか?
「ベルナっていうのはここの貨幣らしい。」ツキやんがボソッとまたガイドブック情報を入れ込む。
「おい君たちさてはビギナーじゃな?ベルナっつうのはもうちょっと下ったとこにあるマーケットでアイテムや他の食料にも代えられる。ウサギと20ベルナ、悪くない話じゃろ?」よくわからないがまあWIN WINの関係であることは悟ったので交換をお願いした。
俺らはそのマーケットに食料調達に向かうことにした。少し下ると人で賑わっているのが聞こえてきた。
「へぇー、山奥から下りたらこんな近くに人が集まってるなんてな…ぶぎゃ!!」
『ドグ!?』
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「薬草があってよかったな。本当に一瞬で治っちまったぜ?」
「あぁ…。」
胡散臭い薬草に助けらる日がこんなにすぐに来るとは…。
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