<第7ラウンド> ボット

無事傷を治した俺らは、怪しいおじいさんの言っていた通り下のマーケットで食料獲得に向かっていた。

驚いたことに、閑散とした森の中から本当にちょっと下にくだっただけで人々の賑わいが聞こえた。

マーケットは思っていたより大きめで、強いて言うのなら、まるで外国の商店街の綺麗バージョンのようだった。そこにある店は回復アイテムや強化アイテムの店、肉食獣や草食獣を扱う店など様々だった。


「おい、肉食獣の売られてる店、さっき俺らのと同じくらいの大きさのウサギ売ってるじゃねぇか!」

綺麗に吊るされたそれに付いた値札を見る。

《50ベルナ》…!?

「あのおじいさん…!!」

「あいつ…!ぼったくられたのか!怪しいと思ったんだよなーくそぉ。」

その店の中に店員さんであろうおばさんの姿を見つける。

「いらっしゃぁい。」

「おばさん、20ベルナだとなんか腹の足しになれるもん、なんかある?」

「20ベルナだとカエルぐらいしかないかねぇ…」

カエル…!?俺らは全く同じことを考えてチラと目を合わせた。

【さすがに食えねぇぇー】

「おいっ、あんた。20ベルナで腹の足しになるものってなんかあるかねぇ?」

おばさんが優しそうなおじさんを呼んで聞いてくれた。

「あ?あぁ、肉は難しいかにゃぁ。実とかなら向かいの店に売ってるのでどうにかなるかもなぁ。」

「実ですか!ありがとうございます。」

「行ってみるか!」

向かいの実の店にはお手軽なおいしいものから最高級品まで様々売っていた。

「すみません、20ベルナで買えて腹に溜まるものを探しているんですけど、何かおすすめしてもらえますか?」

「あぁ、20ベルナねぇ。腹に溜まるものは難しいねぇ。ちょっと待っててくれや。」

おじ、大きい木の幹にダイヤ形の実を3つつけたものを持ってきた。

「こりゃあ一個10ベルナで売っているダイスという実や。老若男女にその大きさや安さ、何といってもこの甘さが認められてこの店でも人気なもんなんや。あんたらビギナーみたいやし、一個特別におまけしてやるよ。」

「あ、『ありがとうございます!!!』」

「ここら辺の店は買取もやっておる、無論この店もや。新鮮そうで珍しい実なんか見つけたらすぐにここに来な、いい値つけてやっからよ!間違ってもテントで商売してるやつらに渡すんじゃあねえぞ。あいつらはぼったくりよ!」

もっと前に教えて欲しかったが、それ以上におじさんの女神のような優しさに惚れ惚れとしていた。


「うめー!なにこれうまい!!」

一生ダイスを食べて生きることになっても全然良さそうなほどの美味であった…

いや…しかし、


腹を満たした俺らは、再び戦に出ることにした。

理由は二つ。一つは最強に少しでも早く近づくため。そしてもう一つは、

…肉も、食べたくなったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る