<第9ラウンド> リコール
作戦は前回の戦いの通り、俺が囮となって動く。前回と同じ3対3だからフォーメーションも変化なしでいくことにした。
前回と違って崖などの高い建物はない。一方で木の本数は3倍近く生えている。少しでも木から体が見えていたらその時点で撃たれるが、隣の木に隠れ移るのも容易い。この勝敗は、決め撃ちあるいはエイム撃ちの上手さにかかっていると考えていい。俺は決め撃ち防止に複雑な動きをとにかく続けて敵に近づく。その間にチャージャー二人が撃つ。まあ大体前回と同じ形でやろう。
そんなことをこの短時間で考えられるちっちは本当にかっこいい。ちっちの冷静な分析力は相変わらず健在だった。
最初の試合はゲームマスターが試合開始の合図を行ってくれたが、それ以降はギルドマスターが行うらしい。合図を行って初めて俺とちっちはそのことを悟った。ツキやんもなんだかんだ真面目にガイドブックを読み込んでちゃんとギルドマスターをやっているらしい。
《よろしくー》 《よろしくお願いします!》
バシュッツ、
いきなりちっちへの攻撃がきた。流石の反射神経で避けたが油断も隙も無い。俺らは茂みに隠れるが、相手はひっきりなしにこちらを撃ってくる。相手に照準を合わせようと体を反らしただけですぐに撃たれてしまいそうだ。俺の透視能力を使っても身動きの難しい状態だと命中するのも難しいだろう。
更にここは相手の慣れた土地だ。木の位置などをほぼ正確に把握しているといっても過言ではない。
無理だ、ハンデが大きすぎる。こんなの、勝てっこないじゃないか。
…待て、なんで俺は隠れてるんだ?
俺は囮だろ?囮はどうどうと動き回って相手の視線を泳がすものじゃないのか??
そうだ。俺は動かなきゃいけないんだ。隠れてる暇なんかあるか。ギルマスで頑張ってるツキやん、頭脳明晰で冷静な判断をしてくれるちっち。俺はなんだ?俺は…
「囮だ。」
俺は思いきり走る。チャージャーの射程圏内はとっくに入った。すぐ撃ってくるだろう。その瞬間にスピードをさらにあげて複雑に走る…
あれ?攻撃が来ない。
「まさか。」
「シューターは戦力にならないと踏んで、俺らを重点的に狙っているのか?!」
ツキやんとちっちの小さな声が銃撃音の中、鮮明に届く。
それでも俺は走った。相手が俺に注目していない。そうさ、俺はただの囮さ。でも囮っていうのはさ、ただ視線を泳がすだけじゃないと思うんだ…
「こういうことも、立派な囮の仕事だろ…?」
バンッバンッバン…!!!
真ん中のチビを倒した。右左の相手を見る。驚いた顔。それと同時に殺意の目が俺を貫く。
やられるっ。
《バシュッツ》。相手の視線が俺にそれた瞬間を見逃さずにちっちが撃つ。
「そうサ、囮とはそうでなくちゃアならない。」
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