月、燃ゆる夜、ふたりは

ほの暗い過去を抱えた恵(めぐみ)は、日課の散歩をしている海浜公園で、絵描きの憬(きょう)と偶然出会う。
実はその前の日、恵は憬を見かけていて――

恵の一人称で語られる情景は、とても詩的で色彩豊か。なのに恵自身は、対人コミュニケーションを避け、人付き合いもせず、機械のように仕事を繰り返す毎日。
その内面と外面のギャップに惹き付けられ、また、心を貝のように閉じている恵の隙間にヒョイッと入ってしまう憬という存在の軽妙さ、そのバランスが絶妙です。

おそらく、恵は、初めて自身の感情を表に出して人にぶつけたのではないでしょうか。
それぐらい、出会うということは、熱量を伴うものだ、と胸に刺さります。

キーワードである「月が綺麗ですね」を巧みに使ったリーディングもお見事で、ずぶりと夜の闇(あるいは自身の心の奥底)にはまり込む、そんな魅力的なお話でした。
是非、読んでみませんか。おすすめです。

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