独特の美しさが胸に残るボーイミーツガール

田舎町の美しい景色を舞台に物語は始まります。主人公の恵は、受け身。一歩間違えると、主体性に欠けると映る女性だ。彼女は、どこか世間と切り離されている。そんな主人公視点で物語は進行してゆく。

大人しいからと言って何も感じないわけではない。恵もそれは同じだ。彼女の視点は、白昼夢のように儚く美しい。

恵はある日、モネの絵が好きだと言う青年に出会う。同じ苗字、名前は憬。彼のコミュニケーションもとり方が独特だ。

周囲の輪に上手く馴染めない二人は、出会った時から惹かれあう。

恵には辛い過去があった。

彼女は閉ざす事で自分を守ろうとしてきたのだ。けれども、憬との出会いが彼女の日常に変化をもたらす。心境の変化が非常に丁寧で、読む者を魅了する。

恵の選択と、憬の受け止め方が何とも二人らしい。


短編でここまでグッと引き込んで、ラストにもたらされるカタルシスは、流石は津多さんと言った所だろう。

満月の下で笑う二人を見てみたい
出会えて、良かったね
そんな風に思った。

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