月、燃ゆ

津多 時ロウ

燈火

 ――柔らかい光の群れが、夜の川を流れていた。

 水面みなもに灯りを揺らしながら、流れのままに、風のままに、ゆらゆらと。

 この光が魂だと言うのなら、果たして彼はどこにいるのだろうか。

 この光が心だと言うのなら、果たして私の心はどこにあるというのだろうか。


 水面みなもで月が揺れている。

 ゆらり、ゆらり。

 それは或いは――


 重く、大きな音が聞こえると、鋼色はがねいろした昏い水面みなもに、一際鮮やかな光が踊った。


 ああ、そうだ。

 彼は色鮮やかに燃え盛り、ただ印象だけを残して消えたのだ。

 まるで、夏の夜の花火のように。


 その花びらは、まだ、私の中でくすぶっている。

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