慰めと寿ぎの抹茶ケーキ

『ここのところ失敗続きで、何となく落ち込んだ気分のままいつもの「満カフェ」の鈴を鳴らす。そのままいつものカウンターに座り、いつもの抹茶ケーキを注文する。
まだ中学2年生の、それも生粋の抹茶嫌いな鈴木優香が、毎度の如く抹茶ケーキを頼むのにはとある事情があった。』

主人公は、吹奏楽部でトランペットを吹いている、中学2年生の鈴木優香である。

優香は、コンクールメンバーに選ばれなかった。
そこでトランペットを置いたまま、帰ってしまう。
コンクールメンバーの練習を邪魔をしたくないという思いやりと、(自分とは違って)選ばれたメンバーがちょっと困ればいいという嫌がらせをしたい気持ちが入り混じって複雑だった。

優香は、帰り道にある満(みちる)カフェに立ち寄る。
優香のお目当ては店主の作る抹茶ケーキだ。

抹茶ケーキは優香を慰める。
けれど、優香を寿ぐのもまた、抹茶ケーキなのだ。