優しく包み込む柔らかい音色が溶け込んでいく、夢の場所へ

いつだって誰だって、自分は独りで寂しいと思い悩むけれども、昔からずっと側で応援して見守られている人がいることに気づかせてくれる作品。
美味しい抹茶ケーキが食べたくなる。

氷室さんの抹茶ケーキには、母親の代用と、母親と一緒に食べた思い出、最後は自分を応援してくれる人たちの祝福の願いが込められていく。

構成はいいし、メンバーに選ばれることと、主人公の優香に起こるさまざまな出来事がうまく絡み合いながら展開し、最後ひとつに結実する作りが非常に良くできている。

『メヌエット ト長調』は、ピアノ教則本『バイエル』下巻に載っていることが多く、初心者向けの曲だともいえる。
まったく弾いたことがない人がいきなり弾こうとするのは難しいが、一、二年続けた人なら、がんばれば弾ける感じ。
ここ一番の一世一代のために、父親は一生懸命弾いて告白したのだ。
そういう話を、母親は娘にしている。

両親の思いを、優香は引き継ごうと音楽をしてきた。
その音楽を諦めるのは、両親の思いを無碍にすることでもあると気づいたから、嫌いになるのを諦め、音楽が大好きになる。
その先には、大好きな両親へと繋がっているから。
気づいて立ち直っていく流れが素敵だ。

お祝いとして抹茶ケーキを食べるけれども、晩御飯が食べられなくなるのではと心配になる。

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