嫁ぎ先で『第二の人生』を手にする

魔女を禁忌とする国から嫁いできたティアナは、新天地でも魔女であることを隠し続けていました。
しかし、旦那様であるジェミニは、せっかく結婚したと言うのに、一週間も家を空けて音沙汰なし。
三週間後、ジェミニの迎えに同行したティアナは、そこでとある事故に遭遇し、魔女であることがバレてしまいます……。

このようなはじまり方をする本作は、非常に繊細かつ美しく、登場人物の心情が描写されます。
地の文だけではなく、台詞の端々からも感情が溢れる様子が読み取れ、登場人物たちが生き生きとしています。

ティアナは魔女が排斥される国からやってきましたが、嫁ぎ先では魔女は差別されず、むしろ聖女として受け入れられます。
厳しい境遇に身を置いてきたからか、ティアナの望みはほんのささやかなもの。

望むままに生きること。
仕事でも、好きなことでも、自由に選択すること。

ティアナと対等であることを望むジェミニは、妻の宝石研磨師になるという願いを後押ししてくれます。
ティアナは宝石研磨師として学びながら、宝石の売買を行っているジェミニの仕事に関わっていきます。

その中で紡がれる物語は、ティアナの両親やジェミニへの想い、そして様々な人々との関わり合いの中で美しい輝きを見せてくれます。
ジェミニとの結婚と宝石研磨との再会によって、生きる意味を見いだせたティアナの想いが、多くの人に伝わり、染み透っていく様子は、心打たれます。

是非、宝石のように美しい本作をお読みください。
心温まることを保証します。

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