輝くことを諦めた少女と輝くことを望んだ少年

 葉月晴夏がナッカと呼ぶ少年は、小学校入学時から中学2年生になった今現在まで、なんとない関係性を保ってきただけの存在だった。が、とあることから晴夏は衝撃の事実を知ってしまう。彼が自らオーディションを受け、俳優になっていたことをだ。その行動力は自分が無能だと知る彼女が棄ててしまったものであり、なにより眩しいもので……

 顔見知り程度の関係性だった晴夏さんとナッカくん(本名は本編で!)。対照として描かれたふたりの関係性に目を惹かれました。

 晴夏さんは自信を失い果て、いろいろ諦めてしまった人です。そんな彼女が淡い親近感を抱いていたナッカくんが自分の意志で光を求めて進む人だった――その事実が深々と彼女の心を抉るわけですね。でも、このマイナス心情が先に続く彼女の選択や決意を輝かせて、最終的にはふたりの関係をまた変える。ここへ至ってはたと気づかされるのですよ。この作品がなにより純粋な青春ものだということを!

 あなたが忘れていたなにかを思い出させてくれる、そんな一作です。


(「酸いか甘いか 初めての恋」4選/文=高橋剛)

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