恐ろしき儀礼とその裏に隠された寂しさ

盲目の18歳の女性――椿は、桃源郷と謳われる村で八千矛神の贄とされた。
両親に先立たれ、叔母を名乗る女性から不遇の扱いを受けていた彼女は、自ら死を望むようになっていた。
売られた村の大蔵で、八千矛神と相対した椿は言う。

「どうか、七日の間に私を殺して下さいませ」

椿が大蔵にいられるのは七日のみ。
その間に殺して欲しいと望む椿だったが、八千矛神は自分を恐れない彼女に興味を持ち、いつしか二人は惹かれ合う――。

椿の酷薄な人生と運命、八千矛神の恐ろしい儀礼とその真実。
そして何より、この儀礼を長い間続けてきた村の『業』。

人間のおぞましさを描きながらも、人間の儚さと温もりに飢える寂しさを描いた一作。
やはり、真に恐ろしきは人の『業』か。
しかし、厳しい人生の中に、寂しさという空白を埋める誰かが傍にいたら……?

神と人。
罪と欲。
愛と救済。

様々な側面から描かれた異類婚姻譚。
是非、ご一読ください。

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