これはもう「物語」の域を超えた「別世界」

このレビューをお読みいただいている方に、先ずはお願いがあります。この物語を読む時には、しっかりと時間を作っていただきたいのです。
お察しいただけるかと思いますが、この重厚で奥深いお話は、片手間でサラサラ読み進めて、その本質が分かる様な物語ではありません。
ですが、断言します。時間を作ってまで読む価値が、この物語にはあります。

頭の中に即座に描ける、まるですぐそこに広がっているかの様な世界。息遣いや衣擦れの音が聞こえてくる登場人物達。息を呑まざるを得ない、予断を許さない戦闘描写。そのどれもを下支えするのは、他に類を見ないほど圧倒的なレベルの細やかな筆致です。これほどまでに精緻に描けば、必然一話も長くならざるを得ませんが、これこそが物語の厚みを増し、鮮やかに彩っています。
加えて、物語の世界観を更に深くしているのが、この世界の歴史です。歴史とは本来設定のひとつですので、ともすれば蛇足になりがちな要素でもあると思うのですが、この物語はむしろ、その歴史が連綿と繋がった先で展開しているのだな…と、強い説得力を伴っています。タグに「架空歴史」とあるのも頷けます。
そんな奥行きのある世界で展開されるのは、神と人の間に産まれ、強大な力を持つが故に不遇の日々を歩む、四人のきょうだいの健気で強い生き様。虐げられても尚希望を捨てない彼らの歩む先の景色を、
…大事な事なのでもう一度言いますが、是非お時間を作った上で、ゆっくりご堪能下さい。

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