重厚で濃密な異色ファンタジーに引き込まれること間違いなし

最新77話まで拝読してのレビューです。

最初にひと言、その辺のありきたりな流行りもの作品を読みたい方には向いていません。
古典的なファンタジーの中でも、とりわけ重厚で濃密な作品であるが故に読み手を選ぶでしょう。
しかしながら、少なからずその手の作品を求めている方には間違いなくはまります。それはもう見事なほどにです。

主役は龍神と人との間に生まれた真那世(まなせ)四兄弟、彼らは人の姿でありながら神の力を宿す特殊な存在です。
そのような存在が今では俗物たちの配下となり、極めて劣悪な環境のもとで使役されているのです。その辺の事情はご一読ください。

この四兄弟、力を合わせて生き抜いていますが、とにかくそれ以外の登場人物が言葉は悪いですが本当にクズばかり揃っているのです。
作者様の特徴として、この憎々しいクズキャラを描くのが本当に巧みで、どうしてここまで真那世四兄弟が苦しまなければならないのか、と憤りを感じずにはいられません。
もちろん四兄弟を理解し、そのうえで彼らを助けようとするごく少数の人間もいます。そういうキャラが出てくると、本当にほっとするのです。
この辺の絶妙なバランスも素晴らしいです。

物語の舞台は平安時代の貴族社会に似せた和風異世界ファンタジーです。読めば読むほど、かつての社会を見ているようです。世界観の構築も見事で、緻密に練られているのがよく分かります。

そしてもう一つ、やはり見せ場は戦闘シーンです。
多種多様な技が繰り広げられます。四兄弟は枷がありながらも強大な力を今なお持っているし、取り巻くクズ含めたキャラも強者ばかりです。
権謀術数うずまく人間関係も複雑で、登場人物も現段階でかなり増えてきていますが、どれも個性的な面々です。お気に入りキャラを見つけるのも楽しいでしょう。


とかく理不尽ばかりを被る四兄弟が報われる日が訪れるのか。
物語はいったん落ち着きを取り戻し、次なる戦いへの準備段階です。
かなりの読む力を要求される本作ですが、読んで損はない高いレベルの作品です。

是非ともじっくり落ち着いて読んでいただきたい。そんな素晴らしい作品です。

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