第5話 夜の日常

「んんっ、今日はここまでにしておこう」


 私は、予習復習と自学を終えて背伸びをした。後は寝るだけなのだが、その前に1つやることがあった。昔は数日に1回程度しか行っていなかったが、ビクトリア様の取り巻きとなってから、身だしなみに気を遣うため体をれたタオルで拭いていた。私はキッチンに置いてある水とおけ、それとタオルを用意し、自分の部屋に持って入った。


「冷たっ」


 段々と夏が近づき暖かくなってきたが、冷たい水を含ませたタオルは冷たかった。衣服を脱いだ私は体の隅々までタオルで拭いていった。


「そう言えば、放課後にあいつの血が手に付いたんだった」


 私は放課後の出来事を思い出していた。手に付いたライアンの血を洗い流す前に、興味本位でめてしまった。味のことはともかく、その背徳的な行為に少し興奮した自分がいた。


「いけない、いけない。思わず変な考えを起こすところだったわ」


 いろいろと妄想を膨らませてしまい、せっかく拭いた体はいつの間にか汗まみれになっていた。彼の血のことを思っていると思わず興奮してしまった。なぜ、それだけのことで、このような気持ちになったのか自分でも理解できなかった。


「拭き直そう」


 冷静になった私は、再び体ふきタオルと使い、汗まみれになった自分の体を拭いた。



「おやすみなさい」


 私は体拭きに使ったものを片付けて、寝間着に着替えてベッドに潜り込んだ。こうして私の1日は終わった。



「んーっ、もう朝か」


 寝る前に体を拭いてスッキリしたのか、翌日の目覚めはとてもスッキリとしていた。背伸びをしてからベッドから出てキッチンに向かった。両親はまだ寝ていて、私は2人が起きてくるまでに朝食の用意をする。火をおこし、パンとスープ、そして目玉焼きの準備を始めた。火をおこすのは火打ち石を使い、カチカチとたたき合わせることで発生した火花で火をける。あとはその発生した火をまきに移し、その火を使って料理を行う。


「よし、完成」


 朝食の準備が終わった頃に両親が起きてくる。3人で朝食を食べた後、両親は仕事に、私は学園に向かった。これが朝のいつもの光景である。



「到着っ」


 私は他の生徒より毎朝少々早めに学園に向かう。


「おはようございます」

「おはようザマス」


 早く行く理由はビクトリア様と取り巻きの2人を出迎えるためである。まずは取り巻きの2人が馬車で登校し、それを私が迎え入れる。そして2人の取り巻きがそろったところで、ビクトリア様を乗せた馬車が学園にやってくる。これも自然と定着した朝の光景であった。


「「「おはようございます」」」

「おはよう」


 ビクトリア様と合流し、今日もいつも通りの学園生活がスタートした。

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