第96話 指名依頼(その4)

「どうぞ召し上がれ」

「頂きます」


 私はクレアさんが作ってくれた昼食を一緒に頂いた。


「すまんな。アメリア先生が来るのがわかってたのなら、もっと良いものを用意できたのだが」

「いえ、私がダンジョンに行っているときに食べている物よりは、良い物だと思います」

「携帯食料と一緒にされてもな。明日からはもっと良い物を用意するから、今日は勘弁してくれ」


 今回、昼食として用意されたものは、パンとソーセージ、そしてスープだった。


美味おいしいですよ」

「そうか?」


 私が感想を言うとクレアさんはうれしそうな顔をしていた。



「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」


 昼食を終えて、クレアさんは後片付けをし、私は午後の診察のため準備を整えた。


「さて、アメリア先生。午後の部を始めようか」

「はい。お願いします」


 時間になり、診察時間が始まると、午前の流れと同様に軽傷の冒険者たちが次々に救護所を訪れた。そのような感じで、特に大きなトラブルもなく、私は5日間で多くの冒険者たちの傷を癒やし、指名依頼をやり遂げた。



「アメリア先生、お疲れ様でした。5日間、救護所を手伝ってくれてありがとう」

「いえ、お役に立てたのなら良かったです」

「先生のおかげで多くの方が助かった。救護所が休みになる明日、明後日あさってと開けて、その次の日から5日間、同じように指名依頼を出すので、これからも良かったら受けてきていただけると助かる」


 5日目の仕事が終わり、クレアさんは今後の予定について少し触れた。


「これからも継続的に指名依頼を出すの?」

「ええ、そのつもりです。飽くまでも依頼という形なので、アメリア先生が必ず受ける必要もないよ」


 その場で私を雇うと言えば良いのだが、クレアさんは私が冒険者と言うことを考慮して、依頼という形にこだわっているようだった。


「わかりました。できるだけ希望に添えるようにしたいと思います」

「ありがとう。アメリア先生」


 私は依頼達成のサインをクレアさんからもらい、冒険者ギルドに報告に行った。



「ケイリーさん、依頼達成の報告に来ました」

「アメリアさん、お疲れ様。あなたが医師免許を持っているなんてね。救護所に名医が現れたって、冒険者ギルド中でうわさになっているわよ」

「そっ、そうなんですか」


 私が冒険者ギルドに依頼達成の報告に行くと、ケイリーさんがうわさのことを話してくれた。私はそれほど大きなことになっているのを初めて知り驚いた。


「えっと、依頼達成の報告だったわね。確かに確認したわ。5日間お疲れ様でした。これが報酬ね。

「ありがとうございます」


 私は依頼達成の報告をして報酬を受け取った。


「んーっ、無事にやり遂げたわ」


 冒険者ギルドを出た私は、背伸びをして依頼をやり遂げたことで達成感に浸っていた。



「チェイス君、ただいま」

「姉ちゃん、おかえり。はい、鍵」

「ありがとう。それじゃ、今日もよろしくね」


 私はそのまま宿に戻り、フロントにいるチェイス君から鍵を受け取り自室に戻った。


「明日は、何をしようかな」


 私はベッドに寝転がり、次の予定を考えていた。クレアさんの話では明日と明後日あさっては、救護所が休みになるらしい。そのため、指名依頼はその次の日から出すと言っていた。


「と言っても休みにするか、ダンジョンに行くかの2択だけどね」


 次の指名依頼があるまで2日間、ゆっくり過ごすと言うのもあるが、せっかくCランクに上がったので、新たに入れるようになったダンジョンの第4階層が、どのようになっているのか見に行くという選択肢もあった。


「取りあえず、明日だけダンジョンに行ってみようかな」


 私は、取りあえず1日だけダンジョンへ行くことに決めた。

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