第7話 放課後の呼び出し

(あーっ、あんなの見た後に、授業なんか受けても全く頭に入ってこない)


 午後の授業が始まり、私は悶々もんもんとした気持ちで授業を受けていた。だが、奨学金のこともあるので、考え込んでしまって授業に集中できないでは、家に帰って復習するときに困る。そのため必死にその気持ちを押しとどめて、板書だけは漏れないように書き写した。



 カランカラン


 それから、私は2教科の授業を受け、ようやく午後の授業が終わる鐘が鳴ったところだ。


(ひゃっはー! 何とか耐えきった。偉いぞ私)


 私は悶々もんもんとした気持ちに打ち勝ち、勝利の喜びをみ締めていた。だが、少し考えすぎたのが幸いして尿意を覚えてしまった。今すぐお手洗いに駆け込まなければならない状態であった。


「ちょっと、アメリアさん、よろしくて?」

「えっ? あっ、はい」


 授業が授業が終わったところで取り巻きAが声をかけてきた。


(もう、早くお手洗いに行きたいのに何なのよぉ。相手はお貴族様だがら、聞くしか私には選択肢がないし)


 日頃から一緒に行動している取り巻きAは貴族なので、話しかけられると無視もできず、平民の私に対して拘束力が発生する。私は、お手洗いに行きたい気持ちをグッとこらえて、話を聞くことにした。


「本日のアレはいつも通り行うそうですわ」

「承知しました」

「では失礼しますわ」

「はい」


 取り巻きAはそう言い残し、自分の席に戻っていった。その間に取り巻きBはライアンに声をかけていた。


(毎日やっているのだから、毎回律儀に言いに来なくても良いのに・・・。あっ、そんなことよりお手洗いっ!)


 私はそう思いながら、お手洗いに駆け込んだ。



「ふ~っ、スッキリした」


 私はお手洗いから出て、安堵あんどの息を漏らした。何がどうなってスッキリしたかは省略するが、とにかくスッキリした。


 カランカラン


「いけない。ホームルームが始まる」


 授業が終わった後、この学園ではホームルームがある。先生からの伝達事項だけで終わることもあれば、クラスで何かを話し合うこともある。これが終わると放課後となる。私は急いで教室に戻った。



「あー、本日の伝達事項は特にない。ホームルームはこれで終わりとする」


 担任の先生がそう告げて、あっという間にホームルームが終わってしまった。


(さて、ビクトリア様に合流しなきゃ)


 私はすぐに席を立ち、荷物を持ってビクトリア様の席まで行った。


「はい」

「お預かりします」


 ビクトリアは自分の荷物を私に差し出した。


「アメリア、よろしく頼みますわ」

「お預かりします」

「アメリア、持つザマス」

「お預かりします」


 私は3人の荷物を持った。4人分の荷物を持っても、私にとってこの重さは苦痛ではない。他の人は日頃から重いものを持つ習慣がないようで、かばんを持つのもつらそうにしていた。ある日私が持ちましょうか? と、名乗り出たことで、いつの間にか例の場所に向かうまで、荷物を持つのが私の仕事になってしまった。


「さあ皆さん、行きますよ」

「「「はいっ」」」


 ビクトリアがそう言うと、彼女を先頭に取り巻きA、B、私の順で並び移動を開始した。



「待たせたザマス」

「別に待っていない。貴族の命令だから、仕方なく来ているだけだ」

「まあ、何て不貞不貞ふてぶてしい態度ですわ。今日もたくさんお仕置きが必要ですわ」


 私たちが向かった先は、学園では死角になり、人が来ることがない秘密の場所だ。そこにはライアンが不貞不貞ふてぶてしい態度で待っていた。私は平民なので言葉に拘束力がないため、彼を呼び出せないが、取り巻きA、Bは貴族なので、平民に対し理不尽な命令を出すことが許されている。そのため、彼女たちに来るように言われると彼は従うしかなく、毎回、渋々この場所に呼び出されていた。

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