第6話 昼休みの出来事
翌日、私は学園で授業を受けていた。私のような奨学金で通っている者は、成績によって打ち切られる場合もあるので、一言も先生の言葉を聞き逃さないように真剣に取り組んでいた。基本的のこの学園は教育レベルが高いが、お金持ちの通う学校でもある。そのため、普通に授業料を払って通っている者は、成績が下がったからと言って、学園から追い出されることはない。このような事情があるため、授業を受ける者
(それはお金の力だから、仕方ないんだけどね)
私はそう思いながら、黒板に書かれたものを万年筆を手に持ち
「まあ、そういうことがあって、みんなも外を歩くときは上にも注意するんだぞ」
「「「ワハハ」」」
先生の冗談にクラスの半分くらいの者が笑っていた。私は、この時間を授業中の休憩時間と割り切っている。万年筆を置き周りを見ると、ビクトリア様を始め、取り巻きAとBも同じ教室で授業を受けている。ビクトリア様は何も言わなかったが、4人は、2年生になったときのクラス替えで同じクラスになった。この学園は各学年10クラス程度あり、そのような偶然は起きるわけがない。裏でビクトリア様が金を動かして同じクラスになるように働きかけたらしい。この話は取り巻きBから聞いたものだ。
(アイツは・・・)
私は無意識に同じクラスにいるライアンの方を見ていた。彼は授業と全く関係ない話をしているのにも関わらず、真面目に話を聞いているようだった。
(私、どうして彼の方を見てしまったのだろう)
私は、無意識にしてしまった行動に気がつき、顔をフルフルと振って正気に戻った。
「アメリア君、そんなに私の話を否定しなくて良いのではないかい?」
「へ?」
休憩時間と割り切っていたため、突然先生に話しかけられても、何を話していたか全く聞いていなかった。おもわず声が漏れてしまった。
「まあ人それぞれ考え方というものがあるから、私は否定しないけどな。と言うわけで私の授業はここまでだ」
カラン、カラン。
先生がそう言うと授業が終わる鐘が鳴った。全員で起立し、授業を行った先生に対し頭を下げた。そして先生は教室から出て行った。
「お昼か・・・」
午前中の授業が終わり、昼休憩になった。この学園には学食があり、全員がゾロゾロと移動を始めた。ちなみに学食は2つあり、お金持ちが利用する、お値段の高いところと、手頃な値段で食べられる一般価格の学食だ。一般価格と言ってもそれなりの値段がする。私
「いつもの場所に行こう」
私は居心地が悪くなり、そっと手提げ袋を持って教室から出た。そして昼休みが終わるまで校舎裏の人気のない場所に移動した。それが私の昼休みの過ごし方だ。
「さて、お昼ご飯にしよう」
私は校舎裏に移動し、昨夜の夕食を取り分けた物を、容器に詰めて持ってきている。それを手提げ袋から取り出した。これが私の昼食になる。
「いただきます」
黙々と私は食べ物を口の中に放り込んでいった。本来なら取り巻きとして、昼食もビクトリア様に同行するべきなのだが、そのようなことができる経済力もないため、昼休みの間は、お世話は他の取り巻き
「ん?」
ふだんは人気のない場所だが、今日は珍しく人の気配がした。食べ終えた容器を手提げ袋に入れて、そっと様子を見に行くことにした。
「んんっ」
「んはっ」
私は気配を消してその声のする方へ移動した。すると草むらの陰で隣のクラスの男女が濃厚なキスを行っていた。
(うそっ、アレってキスというものだよね?)
知識では知っていたが、実際にしているところ見たのは初めてだった。知識の乏しい私は男女がしているその行為から目が離せなくなっていた。
「もう、そんなにがっつかないの。誰か来たらどうするの?」
「こんなところに誰も来ないさ」
2人は満足したのか、いそいそと後片付けを始め、片付けが終わると何事もなかったように校舎の方に戻っていた。
「まさか学園内で、キスをしている人がいたなんて思わなかったよ」
私は、衝撃的な光景を目に焼き付けてしまった。
カラン、カラン。
そのとき、午後の授業が開始される前の予鈴が鳴った。
(いけない。こんなことをしている場合じゃなかった。もう授業が始まるじゃない)
私は急いで教室に戻り、午後の授業を受けることにした。
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