第3話 取り巻きAとB

(ん、味がない。固まっているからかな?)


 ドキドキしながら私はライアンの血をめたが、水分を失い固まっていたために、味がしなかった。めた後は水分を取り戻し、ほんのりと赤みが戻ってきていた。


 ペロッ


 私は水分を取り戻した血の部分を再びめてみた。


(うへっ、鉄の味がする)


 私も何度か出血した経験があり、口の中などで出血したときは同じ味を経験している。他人の血と言っても味は変わらないと感じた。


「・・・私って何をやっていたんだろう」


 ふだんとは異なることをして少々ドキドキしたが、結果を確かめて冷静になってしまった。私はそのまま手に付着していたライアンの血を水で洗い流した。



「すみません。遅くなりました。ビクトリア様はどうされたのですか?」


 付着した血を洗い流した後、私はビクトリア様の元に駆け寄った。だが、当の本人はおらず、取り巻きの2人だけが残っていた。


「ビクトリア様なら、職員室に向かったわ」

「先生に呼び出されたザマス。なので私達はお留守番ザマス」


 一緒に行動している取り巻きは、私のような平民と違い、男爵家と子爵家の令嬢で貴族だ。同じ取り巻きでも身分の差というのは付きまとい、ビクトリア様がいないときは私も言葉遣いに気をつけている。2人は少し偉そうな口調で私の質問に答えてくれた。


「お待たせしたわね。さあ行くわよ」

「「「はいっ」」」


 そこへビクトリア様が戻ってきたことで、取り巻き同士で少し堅くなった雰囲気が和らいだ。


(ビクトリア様がいないと、2人と適切な距離を取るのに悩むなぁ)


 今に始まったことではないが、私と他の2人の取り巻きは加わった時期が異なり、その経緯からも私とは違うものとなっていて、それが原因で2人と私の間に壁ができている。便宜上仮名として取り巻きAと取り巻きBとするが、2人の家はビクトリア様の侯爵家と親交があるらしい、取り巻きAは男爵家、Bは子爵家で2人とも家長の父親から、学園ではビクトリア様のそばにいて様々な手伝いをするように仰せつかっている。自主的にビクトリア様のそばにいる私とは、根本的に理由が異なるので、私も取り巻きだけになったときは、2人とどのように接して良いのか今でも悩んでいた。


「ビクトリア様、先生から何か言われたザマスか?」


 ザマス口調の取り巻きBがビクトリア様に尋ねた。私もどのような返答が出るか聞き逃さないように聞き耳を立てた。


「大した用事ではないわ。個人的な用事よ」

「そうザマスか」


 ビクトリア様は面倒くさい表情で取り巻きBに答えた。そのあとポツポツと話をしながら校舎を出た。



「「「お疲れ様でした。お気をつけてお帰りくださいませ」」」


 校舎を出ると、広場があり多くの馬車が止まっていた。これは身分の高い人が通学に使用している馬車である。その中でも派手な装飾がされている侯爵家の馬車は容易に見つけられる。ビクトリア様の姿を確認した御者はすぐに馬車を動かして校舎に横付けした。その馬車に乗りこんだビクトリア様に対して、私達は挨拶をした。


「あなたたちもまた明日ね。では、ごきげんよう」


 ビクトリア様がそう言うと馬車は動き出し、侯爵家の屋敷に向かい動き出した。


「「お疲れさまでした。また明日よろしくお願いします」」


 次に子爵家令嬢の取り巻きBの馬車が横付けし、取り巻きBが屋敷に帰っていった。


「お疲れ様でした。また明日よろしくお願いします」


 続いて男爵家の取り巻きAが屋敷に帰っていった。

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